挑む、山形創生

第10部人を呼び込む(4) リピーター獲得

2016年12月10日
中津川地区の農家民宿「庄太郎」でくつろぐ福島県からの観光客ら=飯豊町
中津川地区の農家民宿「庄太郎」でくつろぐ福島県からの観光客ら=飯豊町
 特色ある祭りが大勢の人々を呼び込む中、高いリピーター率で観光客を獲得している地域がある。飯豊町中津川地区だ。農家民宿を主体に、地域を挙げたおもてなしが人々の心をつかんでいる。将来的なリピーター獲得につながる修学旅行などの教育旅行も受け入れ、毎年、地域住民の人口を大幅に上回る観光客が訪れている。

■8軒同時開業
 最上川の源流の一つともされる置賜白川に近い農家民宿「庄太郎」。せせらぎを聞きながら、気心の知れた中高年男性の話は尽きない。「自然がいっぱいあっぺ。最近はどこも都会化しちゃって、こういう雰囲気の所がなくなっちゃったんだ。ストレスたまっと、こういう所がいいんだ」

 男性たちは福島県郡山市在住で福島銀行の関係者3人。元社長の松本紀(かなめ)さん(76)が口を開いた。「俺らの住む郡山も昔はこんな感じだったよ」。農家民宿に泊まりがけで川釣りに来たのがきっかけで、中津川が好きになった。庄太郎には2008年から毎年、仲間と年3回のペースで宿泊するという。

 「温泉旅館って今どこだって豪華に、きれいにやってっぺ。そういうとこあんまり好まね」とは仲間の長沼伸さん(69)。「俗化してないっていうのかな。財産だよね、これは」。同じく神谷義晴さん(60)はうなずく。民宿を経営する伊藤和憲さん(57)は「こうして一緒に食卓を囲むんだ。国から世界から、この辺の話から全て出るな」と宿泊者の様子を説明する。

 中津川地区には約120世帯約300人が暮らす。農家民宿は07年5月、8軒が同時開業。同年6月には組合を設立し、受け入れ体制を整えた。飯豊町商工観光課によると、現在8軒ある民宿にここ2、3年は年間1200人前後の観光客が宿泊。その半分近くがリピーターという。04年から、都会の子を招く山村留学の取り組みを行ったことがあり、そうした下地が民宿のスムーズな運営につながった。民宿開業時から続く教育旅行、09年から本格化した台湾人旅行客の受け入れも、無理なく続いている。

■警戒を知らず
 山奥の集落で、行商人が冬に訪れると日帰りできず、昔から各家が人を泊めていたという中津川地区。「知らない人を受け入れるのに慣れているというか、みんな人を警戒するのを知らないで育っているから」。民宿の初代組合長で「いろり」を経営する伊藤信子さん(77)は、地域に根付く自然なおもてなし精神についてそう説明する。国内外の有名観光地や、一流シェフが作った料理に飽きた人たちが「自然が豊か、山菜料理がいい、人柄がいい」と知人を連れて再び来るケースが多いという。「一緒にのんびり話しているだけで喜ばれるんですよ」

 「中津川の例を見ても人が人を呼ぶ。それは国内、海外の観光客でも同じこと」。県観光物産協会の佐藤嘉高専務理事(61)は、リピーターの獲得には人的交流が重要だと強調する。同協会が教育旅行の誘致に力を入れているのは、その考えが根底にあるからだ。インバウンド(海外からの旅行)のメインとなる台湾の学校には、県内の学校との交流を含めたモデルコースを提案。生徒同士のつながりを将来的な交流人口の基礎にしたいと考えている。

 たとえ有名な観光地であっても、人を呼び続けるのは難しい。人口減少により国内市場が縮小する中、安定的に観光客を集める中津川地区は、県内観光地の一つのモデルケースと言えそうだ。

(「挑む 山形創生」取材班)
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