挑む、山形創生

第10部人を呼び込む(8) 東北連携の重要性

2016年12月15日
東南アジア諸国連合の留学生やブロガーを招請した県と宮城県の連携事業。インバウンドの拡大には東北各県の連携が重要になっている=今年10月、山形市山寺
東南アジア諸国連合の留学生やブロガーを招請した県と宮城県の連携事業。インバウンドの拡大には東北各県の連携が重要になっている=今年10月、山形市山寺
 今年8月、台湾・台北市のホテルに東北6県の知事らが並び、台湾の観光業者にそれぞれ地元の魅力をアピールした。東北地方が一体となって行った台湾での初のトップセールス。県境を越え、インバウンド(海外からの旅行)の拡大を図る意気込みを示した象徴的な一場面だった。

■県境関係ない
 「海外からの観光客にとって県境は関係ない」。観光関係者が東北連携の重要性を指摘する際、よく聞かれるフレーズだ。国内旅行に比べて滞在期間が長いインバウンドにとって、一つの県だけでは呼び込む魅力が足りないともいわれる。これまでの旅行商品も東北各県を周遊するルートが一般的。本県の山形、庄内の両空港に到着する国際チャーター便でも、東北を周遊した後の帰りは他県の空港を利用する例もある。

 先のトップセールスを提案したのは、官民で組織する東北観光推進機構(会長・清野智JR東日本会長)。今年6月には名勝や旧跡を結ぶ広域観光周遊ルート「日本の奥の院・東北探訪ルート」に対応するモデルコースを設定し、実際に旅行商品として発売されたプランも。同機構の担当者は「PR力を高めるには、各県の取り組みと並行して東北連携を進めていくことが重要」と強調する。

 東北がそれぞれの情報を発信することで競争は激化しないのか。仙台国際空港営業推進部長の岡崎克彦取締役は「東北へのインバウンドが少ない中、今は東北がまとまり、パイそのものを増やしていくことに力点を置くべきだ」と指摘する。「海外の旅行客は会員制交流サイト(SNS)などで情報を収集し、自ら選択して観光地を訪れる。発信する情報は多ければ多いほどいい」と話す。

 観光庁がまとめた、2015年の都道府県別の外国人延べ宿泊者数によると、東北の合計は60万7890人。全体の6561万4600人に対する割合は1%にも満たない。「県としても東北連携は推進する。互いに魅力を出し合い、アピールしたい」と県インバウンド・国際交流推進課の佐々木紀子課長。これまでも宮城県と連携したブロガー招請などに取り組んでいるが、さらに進化させていく必要性を認識している。

 政府は今年を「東北観光復興元年」と位置付け、東北の外国人延べ宿泊者数を2020年に150万人とする目標を掲げた。16年度当初予算で32億円超の東北観光復興対策交付金を創設し、インバウンド拡大に関する事業が東北各地で繰り広げられている。

■観光復興元年
 インバウンドの拡大には、県内の観光地から一部で不安や戸惑いの声も聞かれた。実際、15年の観光庁の宿泊旅行統計によれば、全体の宿泊者のうち外国人は13%にすぎない。もちろん、国内観光産業を支える日本人の存在は大事にすべきだ。ただ、日本の人口が大きく減少し、これまで国内旅行をけん引してきた団塊の世代が間もなく70代を迎える今、外需の取り込みを真剣に考える時期に来ている。

 東北にはインバウンド拡大の素地(そじ)があり、伸びしろが大きいとされる。各県の祭りが一つとなった東北六魂祭のように、相乗効果を生む戦略がこれまで以上に求められている。

   ◇   ◇

 人材を都市に送り出してきた本県などの地方都市では今、人口減少に直面している。「都会から地方へ」。地方創生の名の下に、人を呼び込み、活力をよみがえらせようとする取り組みはまだ始まったばかりだ。自治体や民間だけでなく、小さな集落でも古里を守り、次世代につないでいくための努力が重ねられている。こうした試行錯誤や創意工夫に加え、産業振興や高速交通網の整備を進め、この歩みを止めてはならない。

=おわり
(この企画は、報道部の斉藤淳一、伊藤英俊、小関裕之、秋葉宏介、近岡国史、三浦光晴、伊豆田拓、小田信博、鶴岡支社・佐々木亨、新庄支社・菅原武史、尾花沢支社・沢幸蔵、米沢支社・野田達也が担当しました)
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