21世紀山形県民会議

テーマ:地方創生へ インバウンド拡大

定期チャーター便を利用して県内入りした台湾の観光客。交流人口拡大に向け、インバウンド需要を取り込む戦略が必要だ=東根市・山形空港 定期チャーター便を利用して県内入りした台湾の観光客。交流人口拡大に向け、インバウンド需要を取り込む戦略が必要だ=東根市・山形空港
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現状の認識

 ―地方創生へ今回はインバウンド(海外からの旅行)の拡大をテーマとした。現状認識、基本的な考え、戦略の方向性などを伺いたい。

 吉村 本県では外国人旅行者の受け入れ数を2020年に30万人にする目標を掲げ、「美食・美酒など本県の強みを生かした誘客の推進」「本県へのアクセス向上」「受け入れ態勢の整備促進」を柱に施策を展開している。アクセス向上では、山形空港で国際線と国内線の動線分離を行い、国際チャーター便の受け入れ機能を強化した。タイや欧米など向けに、羽田空港を経由して山形、庄内の両空港に乗り継ぐ旅行商品の造成、販売にも取り組んでいる。地域産業活性化や地方創生を実現し、国土強靱(きょうじん)化の観点からもフル規格の奥羽・羽越新幹線の整備は不可欠だ。関係者が一体となり、高速交通ネットワークの整備促進を図っていかなくてはならない。

 土田 大都市圏に偏っているインバウンド市場をどう呼び込むか。ただ、大都市圏で成功しているスタイルの踏襲は必要ない。地方には地域固有の観光資源や伝統産業などがあり、買い物などの「モノ消費」ではなく、体験重視の「コト消費」がスポットを浴びるよう努力をするべきだ。東根は7月の市制施行60周年記念式典にドイツの地方都市インゲルハイム・アム・ライン市の市長を招いた。観光案内した際は居合道体験や酒蔵見学などに大変な興味を示していた。また島根県や鳥取県はインターネットを通じた海外向けPRで外国人観光客が増大したという。会員制交流サイト(SNS)などの訪問意欲を刺激するPRにも力を入れていくべきではないか。

 清野 本県は人口減少が著しく、定住人口増加が困難な現状にある。交流人口増加、インバウンド拡大が重要で、いかに来県してもらうかを考えたい。来県外国人の半数超を占めているのが台湾で、重要な地域だ。山形商工会議所は長年、台湾と民間交流を続け、県、山形市も現地自治体と交流覚書・協定を結んでいる。11月には県タイ友好協会が発足し、東南アジアとの交流機運も盛り上がっている。東南アジアは今後も経済成長が見込まれ、旅行消費も増加すると予測できる。自治体間の友好協定を活用し交流を拡大すれば、本県の知名度が高まり、来県につながる。何度も来日する外国人は地方に目を向ける。リピーターを増やすこともインバウンド拡大の鍵を握る。

 佐藤 日本の旅館は全世界から人が集まり、交流する場となった。国際化の波を日々感じている。東日本大震災を機に「私たちが住む所は、私たちで一生懸命頑張っていかなければならない」と再認識した。ここ数年、旅館業界全体で「ウエルカム」という意識が芽生え、実践できる土壌ができ、ありがたいことに山形の女将たちは元気だと言われるようになった。オール山形の態勢を組めるのは本県の強み。みんなで心を一つにすれば、東京五輪は大きなチャンスになる。女将が語り部となり(知名度と人気のある観光地を回る)ゴールデンルートを旅してきた人に、本県や上山の魅力をどんどん発信していく。ぜひそれを応援してほしい。

 熊谷 2015年に「みちのくインバウンド推進協議会」を設立し、ターゲットをタイに絞って誘客に取り組んできた。分かったのは、外国人旅行者を増やすためには空路で直行便を持つことが有利ということ。難しい場合は海外定期便が就航している仙台空港を東北のハブ空港にして山形、庄内に呼び込む戦略を考える必要がある。実際、タイ航空は仙台空港に定期便を就航させる方向で検討していると聞く。タイ・バンコクのスワンナプーム国際空港は東南アジアのハブ空港となっており、周辺国も仙台空港を利用する可能性は高い。仙台から山形まで車で1時間程度なので、バス輸送できる体制が整えば、インバウンドがさらに拡大すると確信している。

 ―アドバイザーとして、ここまでの議論について感想を聞きたい。

 古田 出身の岐阜県で観光交流推進局長を務め、海外に対して食や文化資源などをパッケージにして売り込んできた。山形は観光のポテンシャルが高く、地域資源が満載だ。美食、美酒、山形ならではの精神文化などを体験プログラムにして観光商品にしていくべきだ。国により求めるものが違うので、一様に押しつけてはいけないが、アジアは雪、欧州は精神文化といったターゲットごとの、きめ細かな戦略を定めた上でのトップセールスが大切。市町村の首長や地域の民間人が各テーマに合わせ、知事と一緒に海外に行くプロモーションも効果が高い。オール山形で取り組めば、年間の来県外国人30万人の目標はあっという間に突破できる。

 加藤一 東北地方を訪れる外国人旅行者は一つの県にとどまって観光するケースが多く、流動性に乏しいという。インバウンドを拡大するには、まずは周辺各県と協力して観光圏の広域化を進めることが大事だ。中でも、国際便が就航している仙台空港との連携は極めて重要になる。また、パスポートの所持率が首都圏や大阪、名古屋などと比べて東北は低い傾向にある。定期便ではなくチャーター便を運航する理由は、海外に出て行く人が少ないから。海外旅行をする人を増やさないと定期便化は難しい。山形の空港政策には注目してきたが、素晴らしいアイデアが多い。隣県と協力しながら需要を生み出し、定期便化を目指すのが堅実な方法だろう。

 ―これまで出された展望などを踏まえ、国会議員の皆さんに意見を伺いたい。

 遠藤 山形には出羽三山や山寺などの宗教文化があり、即身仏は他の地域にはあまりない。それらを点ではなく、どう線に結び付けられるかが重要だ。山形大の重粒子線がん治療を生かした医療ツーリズムも国内外で注目されるだろう。インフラ整備の視点では山形だけでなく、東北全体でどうネットワークを構築するかが大切だ。青森や金沢は新幹線開通で観光客が増えており、本県も誘客のため東京―山形間の乗車時間を1時間台にしたい。自民党の整備新幹線等鉄道調査会の会長代行に就いた。財源を含めトータルで山形新幹線や奥羽、羽越両新幹線などの整備方針を決めていきたい。発想の転換を大切にし、リスクを取ってでも他がやっていないことに挑戦することが大事だ。

 鈴木 ハード面では道路が重要だ。仙台空港を経由して本県に来るときは国道48号に加え、国道47号も身近な道路になり、県内での移動を考えると国道112号も含めてしっかりと整備しなければならない。山形新幹線では福島―米沢間の新トンネルができれば、かみのやま温泉など各観光地にスムーズに行くことができる。(首都圏から)観光地に新幹線ですぐに行ける場所は全国的にありそうでない。ソフト面では、外務政務官をしている経験を踏まえると、優しさ、親切さが日本人の強みだと感じている。ハード面の整備は時間がかかる。その間、ソフト面をもう少し強化するような施策を本県でも実施したい。それが何十年先にもつながっていくだろう。

 加藤鮎 ソフトの強化とハードの整備は車の両輪の関係と考える。まずはハード面から話をしたい。格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパンが成田、庄内両空港を結ぶ新規路線の就航を前向きに検討しており、交流拡大のチャンスだ。チャーター便も重要で、滑走路延長を進める必要がある。道路の横軸整備も欠かせない。観光だけに限らず多方面で道路整備は必要とされており、特に酒田石巻道路の確保に力を入れたい。新幹線は基本インフラという視点から予算を幅広く確保するための手段を模索する必要があるのではないか。クルーズ船についてはまだ地域の経済効果につなぎきれていない。知恵の出しどころで、官民一体で取り組むべきだ。

 舟山 来県を促すポイントは交通アクセスと目的だ。アクセス面の課題は多いが、今あるものを生かすため、各方面の知恵を絞りたい。キーワードは「つなぐ」。乗り継ぎアクセスを改善し、広域連携で観光客を呼び込む工夫が必要だ。ローカル線は一見、不便にみえるが、旅行者は速さではなく情緒、景色を求める面もある。ローカル線を利用すれば、そこにも魅力を感じてもらうことができる。山形の魅力は山形にしかなく、ものづくりや農作業など山形ならではの体験を売り込むことも大切だ。その体験をつないで観光商品をつくり、発信したい。素材は多い。インバウンドが増えれば国内観光客も増える。知恵を結集し、本県の総合力を発揮したい。

 大沼 日本政府が掲げる観光振興策の流れに乗ることが大切だ。重要なのは人材育成。台湾の観光客が増え、各旅館には台湾や中国の従業員が増えている。宿泊分野で外国から人材を受け入れ、育成することで、外国の観光客が山形に何を求めているか、どういった観光ルートが必要かが分かる。衛生管理も必要。日本は衛生的だと言われるが、実は欧米諸国の基準に比べれば、トイレなどはまだまだ。国際的な衛生基準をしっかり表に出すことで、安心して過ごしてもらうことができる。香港から山形へ来る人が増えているが、山形の人は香港やタイという地域・国について多く知らない。相互理解を進めるためにも、各国について知る場所や機会が必要になる。

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