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動物画家・故薮内正幸さんの歩み、長男の竜太さんが山形市で講演

 「ガンバの冒険」シリーズの原作の挿絵で知られる動物画家薮内正幸さん(大阪府出身、1940~2000年)は幼い頃から描いていた動物の絵が生涯の仕事につながった。まさに「好きこそものの上手なれ」。山形市立図書館で昨年12月9日~17日に開かれた原画展に合わせ、長男竜太さん(48)=山梨県、薮内正幸美術館長=が講演し、父親の歩みを紹介しながら「子どもたちは、興味があることに時間を惜しまず取り組んでほしい」と伝えた。以下は講演要旨。

ファイナンシャルプランナーの山田久美子さん
ファイナンシャルプランナーの山田久美子さん

 父は5歳のときに終戦を迎えた。遊ぶものも何もない時代で、身近な生き物に興味を持ったようだ。曽祖父に動物園に連れて行かれとても感動したという。今ならすぐに写真を撮るところだが、父は姿を描き写すことで感動をとどめようとした。

 頻繁に動物園に通って動物をスケッチしていたそうだ。動物を一つ決めて一日中観察し、何枚も描き上げる。すると頭が動物でいっぱいになるのか、例えばライオンを見て帰った日は四つ足で家の中を歩いていたらしい。まねっこ遊びの一環ではあるが、結果的に観察力を養っていたようだ。よく来場者の方から「うちの子は絵が好きだけど、どこでどういう先生から習えばいいのか」と尋ねられるが、父が絵を習ったのは学校の図工の時間のみだったという。

 好きなことについてはもっともっと知りたくなる。小学生のときには祖父から買ってもらった1冊の本をとても大事に読んでいたという。動物学者の高島春雄先生が書いた「動物と私たち」。父は著者に手紙を書いて分からないことを質問していた。必ず手紙には動物の挿絵を添えて、先生に成果を見せていた。

 知識を深めていくと質問も専門的になる。すると高島先生が「ほ乳類の質問が多いようだから、専門の先生を紹介するよ」と動物学者の今泉吉典先生を紹介してくれた。父は今泉先生ともやりとりをするようになった。

薮内正幸さんが挿絵を描いた「どうぶつのおかあさん」(左、福音館書店)と「冒険者たち ガンバと十五ひきの仲間」(岩波書店)
薮内正幸さんが挿絵を描いた「どうぶつのおかあさん」(左、福音館書店)と「冒険者たち ガンバと十五ひきの仲間」(岩波書店)

 高校生になると進路を考えなくてはならない。本人は動物の絵を描いて生きていくつもりはなかった。だがある日、今泉先生から手紙がきた。「福音館書店から動物図鑑を出版する予定だが、挿絵を描いてくれないか」というオファーだった。編集長からも直々にお願いされ、動物図鑑の作成に関わることを決めて同書店に入社した。

 数年は編集長や先生の指導のもと、起きている時間は全て動物を描く時間に充てた。博物館に通い詰め、骨格模型を何度も模写した。何百カットを何回も書きなおす毎日だったが、父は当時を「あの時間は楽しかった」と振り返っていた。

 そうやって努力したものの、会社の都合で急きょ図鑑の出版が取りやめになった。「今でも胸に穴が開いた気持ちだ」と父は生前話していた。しかし無駄にはならなかった。その日々があったからこそ、子ども向けの絵本で躍動感のある動物を描くことができたのだろう。

 父が何十年も描き続けることができたのは好きなことだったからだ。好きで描き続けてきたからこそ、うまくなれた。「好きこそものの上手なれ」と言うが、本当にそうだと思う。どんなことでも繰り返しやることが大切。子どもたちは好きなものを一つでいいから見つけてほしい。そして時間をかけて向き合っていってほしい。

メモ

 【ズーム】薮内正幸(やぶうち・まさゆき)さん 大阪府出身の動物画家で、毛や血管など細部まで丹念に、生き生きと描く作風で活躍した。高校卒業後の1959(昭和34)年に福音館書店(東京都)に入社。71年にフリーとなり、図鑑や絵本の挿絵、広告など幅広く手掛けた。主な作品に「冒険者たち ガンバと十五ひきの仲間」(斎藤惇夫作、岩波書店)、「どうぶつのおかあさん」(小森厚作、福音館書店)、サントリー「愛鳥キャンペーン」新聞広告など。1万点を越える原画が山梨県北杜市の薮内正幸美術館に収蔵、展示されている。

2018年1月16日掲載
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