むがーす、とんとあったけど。ある年なぁ、雪消で、ポカポカ暖かえ春なたけど。ほうすっど、今まで穴ん中で眠ってえだ蛇、目さまして、穴がらニョロニョロ出できて、草原で昼寝しったけど。ほのうず、蛇の腹の下がら(※)茅芽出して、ドンドンおがてきたけど。ほんで、茅の芽ぁ尖ってで、固えもんださげ、蛇の腹さジュグジュグ刺さてえったけど。
ほのうず、蛇目さまして、隣の家さ行ぐがど思たげんども、茅刺さてえるもんださげ、体動がねけど。蛇ぁ「困たちゃ、困たちゃ。このままだど俺死んですまう」てえだけど。ほうすっど、土の中がら「ちぇっと待で、ちぇっと待で」て言って、太え(※)ワラビ出できたけど。ワラビぁドンドン伸びで、蛇の腹、下がら押す上げで、茅の芽取ってくっだけど。
ほんで、蛇ぁ喜んで、「ワラビ、ワラビ。有難さん」て言って、ワラビの頭の上ニョロニョロはって行ったけど。
んださげ、今でも山ん中で蛇と会ったどぎぁ、「(※)長虫や、長虫や。ワラビの恩忘っだが」て言うど、蛇ぁ急えで薮ん中に入て隠んなだど。とんびすかんこなえけど。