昔、あったけど。昔、鮭川のある村さ孫市て言う爺さまえだけど。昔ぁ、鮭川さ橋かがてえねくて、村の人達ぁみんな舟で渡ったけど。孫市爺さまぁほの渡舟の(※)タエスで、毎日朝がら晩まで、村の人達どご渡しったけど。
あっどぎ、夜の夜中、「ほーほー」て、向こう岸で、誰が爺さまどご呼ぶ声すっけど。爺さま「誰だべ。こがえだ夜中、渡る人えだんだべが」て不思議したげども、舟出したけど。ほうすっど、(※)若え衆えで「あっつさ渡してけろ」て言うけど。爺さま「はえ」て言って舟さ乗しぇだけど。ほうして、次の朝間、舟んどさ行ってみだれば、舟ん中さ油揚げ包んだ(※)苞こあっけど。
ほんで、爺さま「これぁ、ドン吉て言う狐だな。ドン吉ぁこっつの山のトン子と言う娘の狐さ会え来たんだな」とゆうごど分がたけど。ほんでも、爺さま知しゃねふりして、毎晩毎晩渡してくっだけど。
ほうしてえるうず、ある晩、爺さまの小屋「とんとん」て叩えで、ドン吉どトン子ど2人、赤ん坊抱えで来たけど。ほして「爺さま、爺さま。毎晩毎晩ありがどうさんでした。お陰で、俺だ丈夫な赤ん坊授がた」て言って、魚どが餅どがいっぱえくっでえったけど。ほんで、孫市爺さま一期楽々ど暮らしたけど。とんびすかんこなえけど。