夢のJ1昇格を果たしたサッカーのモンテディオ山形。国内トップレベルの舞台で生き残るため、これから何が求められるのか。来季の予算や県内の支援体制、フロントの取り組みなどを探る。
「奇跡」。山形の昇格はこう表現されることが多い。「投資額=成績」が成り立つとされるサッカーで、今季の運営費は約7億円。J2平均に満たない小規模クラブだからだ。J1には30億円台のクラブがひしめく。来季、山形の運営費が劇的に増加する可能性は低く、10億円台前半が現実的だ。
2007年シーズン、J1クラブの平均運営費は32億6700万円で、J2は11億6300万円。08年もほぼ同額と見込まれる。大型スポンサーを持たず、J2平均に届かない山形が、来季、“J1レベル”の資金を調達するのは困難だ。
過去にも山形と同様に親会社を持たない地方クラブがJ1で戦っている。05年、6億7000万円の予算で昇格した甲府。J1初挑戦の06年は15位で残留を果たした。この年の運営費はJ2時代の約2倍となる13億4300万円。入場料収入は1億6000万円から3億8000万円、広告料収入は2億4000万円から5億7000万円に増えた。
先例を踏まえ、チームを運営する県スポーツ振興21世紀協会の海保宣生理事長は「(来季予算は)ざっくり考えて10億から11億」と言う。Jリーグからの分配金、相手サポーターの増加で入場料収入は増えると見込むが、「甲府の例を山形に当てはめて倍(の見積もり)は甘い。甲府は首都圏で相手が来やすい環境」と足元を見詰める。
運営費の拡大に不可欠なのが、広告料収入の柱・ユニホームスポンサーの獲得だ。今季、開幕直前に胸部の「はえぬき」が抜けたため、これまで背中スポンサーの「平田牧場」が穴を埋めた。胸部の値段が2500万−3000万円とされる現在でこの状況。J1相場で2億円と言われる胸部スポンサーを地元で探すのはほぼ不可能だ。県外企業にも打診しているが、現時点で実現性は低い。
そこで海保理事長が注目するのが、県産米新品種「山形97号」の存在。「山形県は米が最大の産業。胸にそれを持っていきたい気持ちはある」と語り、「県と全農で合わせてスポンサーになってくれないかとお願いしている」と話す。
社団法人という運営母体の性質上、求められるのは“身の丈”に合った運営。J1昇格と同時に予算規模を飛躍的に拡大させ、後に多額の負債を抱えクラブ経営に苦しんだ仙台の例がある。山形の場合はその轍(てつ)は踏めない。今季、昇格に伴う選手へのボーナスなどで1500万円ほどの赤字が生じそうだが、来季の収入増加を見込み「2シーズンでちゃらにする」(海保理事長)。
今回、県から借り入れる3億円はJ1加入金のほか、収入のない1−3月に必要となる09年シーズンの活動資金に充てる。借り入れで当座をしのぐとしても、来季以降に見込める収入を超えた大型補強はできないのが現状だ。
07年の横浜Cや今季の札幌など、ここ数年、降格の憂き目にあっているのは運営費が10億円台のクラブ。06年に何とか残留した甲府も、翌年にはJ2へ逆戻りした。お金がなければ戦えない−。山形はJリーグの“常識”を覆す戦いに挑むことになる。