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「米沢牛」定義見直し、広がる波紋(上) 当惑する一貫経営農家

2012年07月02日 11:12
去勢牛の定義除外を「納得できない」話す伊藤悟さん。戸惑う生産者も少なくない=飯豊町高峰
去勢牛の定義除外を「納得できない」話す伊藤悟さん。戸惑う生産者も少なくない=飯豊町高峰
 置賜8市町と農協などで構成する米沢牛銘柄推進協議会(会長・安部三十郎米沢市長)は、米沢牛の定義から「去勢牛」を外すことを決めた。食味が良いとされる雌のみに限定することで、ブランド力を維持しようという狙いだ。景気低迷、福島第1原発事故の風評被害を引きずる中、産地復権を懸けた大方針と言えるが、関係者には波紋が広がっている。改定実施は2年半後の2014年12月から。加えて枝肉の重量制限の検討も始まっている。当惑する生産者、危機感の強い業者の声を拾った。(米沢支社・後藤恵美)

 天井に取り付けられた大型の扇風機が、暑さに弱い牛のために涼しい風を送っている。飯豊町高峰の伊藤悟さん(62)の牛舎では約80頭の牛が餌をはんでいた。父親の代に牛の肥育を始め70年以上たつ。「米沢牛を雌だけに制限して本当にブランド力は高められるのか。去勢牛だけを求める消費者もいる。納得いかないことがたくさんある」。伊藤さんは本音を漏らした。

 2006年からは長男の儀宝(よしたか)さん(33)らが繁殖に乗り出し、繁殖と肥育の一貫経営を行っている。現在は、牛舎5棟で繁殖牛を含め約200頭を肥育。儀宝さんも「生まれた雄牛はどうするべきか」と当惑している。

 米沢牛の生産農家は、繁殖牛に人工授精し、生まれた子牛を10カ月ぐらいまで育て市場に出荷する繁殖農家、その子牛を買い大きく育てる肥育農家、それに両方を行う一貫経営農家に分かれる。このうち、定義改定で最も影響を受けるのが伊藤さんのような一貫経営農家だ。これまで米沢牛として出荷できていた去勢牛は、子牛のうちに市場に出すか、そのまま肥育して米沢牛ではない県産牛として販売せざるを得ず、米沢牛ブランドという付加価値を失う。

 現在、置賜家畜市場(川西町)の子牛市場に出される去勢牛の多くは、新潟県や茨城県などの肥育農家に購入されているという。伊藤さんは「去勢牛のせりの購入側に置賜の業者が加わらなくなることで、価格が下がることも考えられる」と懸念する。

 生産農家の置かれている環境は厳しさを増している。景気低迷と東日本大震災後の風評被害などで、枝肉価格は前年より2割程度安い水準のままだ。最高級の「A5」ランクですら5月の平均価格は1キロ当たり2241円。昨年5月より200円近く低く、3000円台の値が付いた07年前後と比べると25%ほど下がっている。

 生産者でつくるJA山形おきたま米沢牛振興部会によると、単純計算で子牛の購入価格は約40万円、せりに出すまでの餌代が30万円、その他の経費が10万円と、1頭当たり80万円経費がかかる。枝肉重量を400キロで考えると、1キロ単価が2000円をきると採算がとれない状態になる。

 JA山形おきたま畜産酪農課の集計では、11年度は米沢牛の認定頭数2211頭のうち去勢牛は7%ほどだった。振興部会の森谷英一部会長(58)は肥育農家だが「同じ生産者として『少数だから』では済まされない。一貫経営のつらさも分かる。だけど、米沢牛の今後のために理解してもらいたい」と話す。

 伊藤さんは「置賜の牛を置賜で育てる『地域内一貫』にこだわってきた。これからも、そうしていきたい。去勢を定義から外すより、生産技術の底上げが必要ではないか」とし、定義改定以上に品質向上の取り組みが重要と指摘した。

【米沢牛の定義】 (1)置賜3市5町に居住し米沢牛銘柄推進協議会が認定した飼育者が、登録された牛舎で18カ月以上飼育(2)黒毛和種の未経産雌牛か去勢牛(3)米沢牛枝肉市場か東京食肉中央卸売市場に上場、または米沢市食肉センターで処理され日本食肉格付協会の格付けを受けた枝肉(4)生後月齢32カ月以上で日本食肉格付協会で定める3等級以上の外観並びに肉質および脂質が優れている枝肉(5)県の放射性物質全頭検査で不検出のもの-の5点で、すべて満たさなければならない。

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