県内ニュースエネルギー地域創生第3部・県内の熱利用(2) 舟形の雪氷熱
2012年07月04日 08:05
送風口(右下)から冷たい風が勢いよく吹き出す。ファンを回して外気を雪に送り、冷やす世界初の雪冷房システム=舟形町・町農林漁業体験実習館
尾花沢市との境にある舟形町猿羽根山の町農林漁業体験実習館。建物内にはエアコンがない。「ここにはこれがありますから」と同町総務課長の高橋剛さん(59)はスイッチを押した。ファンの回る音が響き、送風口から冷気が吹き出した。瞬く間に汗が引く。「世界初の試み。雪冷房と名付けた」 県内有数の豪雪地帯である同町が1995年に整備した。仕組みはいたってシンプルだ。ファンを回して外気を雪の塊に送り、雪と絡ませて冷やすだけ。構造的にはエアコンより空気清浄器の方が近い。 エネルギー源となる雪は別棟の貯雪槽にある。保温効果を上げるため、四方をコンクリート(厚さ60センチ)と断熱材(同5センチ)で覆った。「最大で120立方メートル入る。徐々に減っていくが冷房が必要な9月ごろまでは持つ」と高橋さん。
屋根に積もった雪が1カ所に落ちる構造に設計した沼沢一義さん宅(中央)。左下の白壁の建物が貯雪槽=舟形町舟形
どんな優れた技術であっても実用化し、普及させなければ意味がない。雪冷房を一般家庭に導入することは可能なのだろうか。 ネックは“燃料”となる雪の量が膨大になることだ。さらにその雪を真夏でも維持するために、断熱効果を高めた特殊な貯雪槽が必要。舟形町の町農林漁業体験実習館のように敷地面積が広い施設ならば貯雪槽の設計はある程度柔軟に対応できるが、スペースが限られている一般家庭ではそうはいかない。 「雪を圧縮させて氷に近い状態にすれば、もっとコンパクトな設計で対応できると思う」と提言するのは、舟形町の自宅に雪冷房システムを取り入れたエコ産業プロジェクト研究会長の沼沢一義さん(71)。1999年に自宅を新築した際、配管から積もった雪が1カ所にまとまって落ちる屋根の形状に至るまで、全て同システムに合わせた設計を取り入れた。雪冷房の核となる貯雪槽は自宅裏に建設。容量は48立方メートルで、重さにして18トンの雪が入る計算だ。 「計算では1シーズン持つはずだったが、例年、8月いっぱいでなくなってしまう」と沼沢さん。貯雪槽を拡大すれば使用できる期間は延びるが一般家庭では限界がある。そこで、一工夫。空気を多く含んだ雪を圧縮すれば貯雪スペースの大幅な縮小が図られる-と考えた。 沼沢さんの構想はこうだ。効率化を図るため、拠点となる大規模な貯雪施設を整備し、冬の間、山間部のきれいな雪をためる。雪氷変換器を使って発泡スチロールに入る大きさに圧縮し、各家庭に灯油を宅配販売する感覚で、圧縮雪を届けるとの内容だ。 沼沢さんは「邪魔者扱いされる雪が夏になるとなくてはならないエネルギーになるわけだ」と夢を語った。 構想段階ではなく、発展途上ながら既に実用化していることが大きい。とかく熱エネルギーといえば「熱い」とのイメージが強い。もっと「冷たい」パワーに目を向ける必要がある。そう考えれば雪は膨大なエネルギー源といえる。(新庄支社・安達一智)
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