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困難支えた祖母の味継ぐ水ギョーザ 山形の住宅街に専門店

2017年08月22日 12:31
「祖母の遺した水ギョーザの味を広めたい」と話す太田淳子さん=山形市緑町2丁目
「祖母の遺した水ギョーザの味を広めたい」と話す太田淳子さん=山形市緑町2丁目
 山形市緑町2丁目の住宅街。緑に囲まれた古民家に白いのぼり旗が揺れる。山形では珍しい水ギョーザ専門店「みどりのしづく」。店主の太田淳子さん(57)が50年前に事故死した祖母のレシピを受け継ぎオープンさせた。祖母と父の事故死、母の認知症、自身のリストラ…。困難に見舞われた時、おいしいギョーザが支えになった。その味が今、多くの人を引きつけている。

 祖母れんさんは1958(昭和33)年、自宅で料理教室を開設。家庭でも自慢の水ギョーザを振る舞い、家族は皆、その味が好きだった。皮から作る本格派。嫁いだ母みゆきさん(88)も味を受け継いだ。

 しかし67年7月、一家は突然の不幸に見舞われた。れんさん=当時(63)、父裕さん=当時(40)、太田さん、弟の4人が乗った車が南陽市でトラックと衝突。太田さんと弟は一命を取り留めたが、祖母と父は帰らぬ人に。仕事で同乗しなかった母を合わせ3人が残され、悲しみに暮れる日が続いた。

 そんな中、食卓に水ギョーザが並ぶ日は心が満たされた。悲しみは癒えなかったが、祖母が遺(のこ)した味は生き続けた。教員として働いていた母は多忙で、手間の掛かる料理ができるのは休日だけ。いつしか毎週日曜日は「水ギョーザの日」になり、太田さんはその日を心待ちにした。調理を手伝ううちにレシピも自然と覚えた。

 太田さんは大学卒業後、都内の大手メーカーに就職しながら、各地で水ギョーザを食べ歩いた。いつしか「定年退職後に飲食店を開きたい」との夢を抱いた。

築84年の自宅の風情を残し、オープンした「みどりのしづく」
築84年の自宅の風情を残し、オープンした「みどりのしづく」
 2014年夏に転機が訪れた。1人暮らしだった母の認知症発症が判明。その直後には、太田さんがリストラに遭った。当時54歳。恨み節も出かかったが、「どうせ退職後は店を開こうと思っていた。それが5年早くなっただけ」。そう思うと、気持ちが楽になった。

 15年3月に退職後、母の介護で同年11月にUターン。築84年の自宅を店として使うため改装した。

 店を開く際、実は他の食べ物も検討したが、高校時代に食べただけだった友人が「あの水ギョーザ、おいしかった」と言ってくれた。「そんなに長い間、記憶に残る味なら、もうこれしかないな」と太田さん。16年9月に開店した。

 製法、レシピはれんさんが作った当時のまま。皮は北海道産小麦粉を原料に一枚一枚手作りで、豚肉、野菜は県内産が中心。添加物は一切、使わない。店名「みどりのしづく」は庭に茂る木を見て、水がしたたるイメージから名付けた。

 朝6時起きでの仕込みは骨が折れるが、水ギョーザ一つ一つに恩返しの気持ちを込める。「祖母が事故で亡くならなければ、この味は料理教室を通じて県内に広まっていたはず。私が代わりに広める」。ギョーザの皮はさまざまな思いを包んでいる。

 【メモ】みどりのしづく 営業時間は、1袋(10個入り)860円の持ち帰り販売が午前11時~午後7時、ランチ(550円から)が午前11時~午後2時。日曜定休。住所は山形市緑町2の10の41。電話は023(673)0429。

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