県内ニュース

疑問―県立3病院システム統合(上) 迷走、医療行政の怠慢

2018年01月20日 07:18
県立3病院(中央〈上〉、新庄〈左〉、河北〈右〉)のコラージュ。システム統合事業を巡り、県病院事業局の進め方を問題視する声が出ている
県立3病院(中央〈上〉、新庄〈左〉、河北〈右〉)のコラージュ。システム統合事業を巡り、県病院事業局の進め方を問題視する声が出ている
 県立3病院(中央、新庄、河北)のシステム統合事業を巡り、一部の県議や事業者が県病院事業局の進め方を疑問視している。ソフトや機器の更新期を目前に控える今、メーカー統一だけを先行させるのはなぜか。システム統合まで2段階以上のステップを踏む必要が本当にあるのか。そこには医療行政の迷走と、医療IT業界の特殊性が見え隠れする。
(県立3病院システム統合問題取材班)

 迷走の発端は、事業者と契約まで結んだシステム統合事業が白紙となった2010年までさかのぼる。県病院事業局は09年8月、外資系コンサルタント大手のアクセンチュア(東京)と約18億円で、電子カルテの導入を中心にした総合医療情報システムの委託契約を結んだ。しかし、事業化が遅れ、再三の要請に応じなかったため、約1年後に契約を解除した。

 この時、県は400床以上の病院と県立病院に対し、12年度まで電子カルテを導入する県保健医療計画を既に立てていた。タイムリミットが刻々と迫る中、「やむを得ず、個別の病院でそれぞれのシステムを契約し、稼働させた」(県立病院課)。電子カルテは導入されたが、中央はNEC、新庄は富士通、河北はシーエスアイ(札幌)製のシステムを使用し、運用する事業者もそれぞれ異なる状態で今に至っている。

■「事故防ぐ観点」
 当時導入した機器などが、間もなく更新時期を迎える。一部は保守期間を延長して対応しているほどだ。現行のままの更新か、それともシステムを統合させるのか。昨年2月に開かれた内部の医療情報担当部長会議は、そのどちらでもない「メーカーを統一しての“更新”」を決めた。

 この決定について、新沢陽英病院事業管理者は「現場での医療事故予防の観点から、まずは同一メーカーを導入した方が良い」と、県議会などで繰り返し説明した。だが、メーカーが異なる現状でもシステムに起因する医療事故の報告はないという。説明の中でメーカー統一を「共通パッケージソフトの個別導入」と表現したが、県内のあるIT事業者は「規模も仕様も違うのに『共通パッケージソフト』はないだろう」と疑問符を付ける。県内の別のIT事業者はこう言う。「メーカーを先に統一してしまえば、確かに次(システム統合)はやりやすい。だが、それは財源に余裕があり、しかも次もそのメーカーが請け負う場合だけだ」

■赤字の病院会計
 16年度の病院事業会計決算は18億6600万円の経常損失で、総収支ベースの累積赤字は400億円を超えている。医療の安心安全を確保するためとはいえ、病院経営は経費の節減を求められている。その中で、電子カルテをはじめとする仕様を変更せず、メーカーを統一するという「(システム統合に向けた)ワンステップ」は、メーカー間の競争を阻害し、後年度にシステム統合する際のかかり増しも懸念される手法だ。

 アクセンチュアとの契約解除から7年以上がたつ。議論する時間は十分あったはずだが、システム統合に向けた本格的な検討は3年ほど前から始めたという。新沢管理者は「(アクセンチュアの契約解除後)遊んできたわけではない」と語気を強めるが、病院それぞれに「やむを得ず」入れた電子カルテシステムが、現在まで尾を引いている。

 県保健医療計画を達成するために電子カルテを導入し、更新時期が迫ったためにメーカー統一を打ち出すというこれまでの経緯は、場当たり的な対応にしか見えない。現時点で、最終的に仕様を統一し、システム統合を完成させるまでの具体的なロードマップも示されていない。医療行政の怠慢と言わざるを得ないのではないか。

◇事業を巡る経過
2007年3月  県立日本海病院(当時)の電子カルテ稼働
2008年2月  県立病院医療情報化基本構想改定(各病院の医療情報を一元化して集中管理、統合運用を行う方針を定める)
2009年8月  「アクセンチュア」と医療情報システム整備運用業務の委託契約を締結
2010年9月  「アクセンチュア」の債務不履行により契約解除
2012年1月
~2013年12月 中央、河北、新庄の各県立病院で電子カルテを納入し、順次稼働
2015年6月  各県立病院のベンダー、メーカーに医療情報システムの更新整備方法の提案を依頼
2017年2月  医療情報担当部長会議を開催し、各病院に同一メーカーの機器とソフトを導入する方針を決定

関連記事

by weblio


おすすめニュース

文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内7市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

週1回配信中!

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2018年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2018年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報、おくやみ… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から