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疑問―県立3病院システム統合(下) 地元発注の意識薄く

2018年01月22日 07:18
入札方法審査委員会(左上)、県議会厚生環境常任委員会(右下)などのコラージュ。一括発注に対し業界から「巨額利権が生じるのでは」との指摘も。地方創生と逆行した形で事業が進んでいる
入札方法審査委員会(左上)、県議会厚生環境常任委員会(右下)などのコラージュ。一括発注に対し業界から「巨額利権が生じるのでは」との指摘も。地方創生と逆行した形で事業が進んでいる
 「入札までまだ数日間あるはず。チェックしやすい態勢だけはつくっていただきたい」。県病院事業局の煮え切らない回答に、委員の1人がくぎを刺した。山形市内で15日に開かれた県立3病院(中央、新庄、河北)のシステム統合に関する入札方法審査委員会。「検討させていただきたいとは存じますが、正直かなり大変な作業かと思いますので…」。当局の担当者は言葉に詰まりながら答えた。

 指摘したのは金内秀志県工業技術センター庄内試験場長で、どんなシステムを求めているかを列記した要件定義書を問題視した。病院ごとに項目番号の振り方がばらばらだったからだ。「共通項目なので合わせるのが基本です」。消極的な答弁を遮るように、金内氏の口調は厳しさを増した。「まだ数日ある」という言葉に「できる範囲だ」という思いがにじんだ。病院事業局の事業であるにもかかわらず、かじを取れない当局の力不足を印象づけた。

 医療とITの両方に詳しい人材が医療行政にいない弊害が、システム統合を巡る経緯を複雑にしている。その指摘は昨年12月12日の外部有識者委員会でもあった。「次は仕様、運用を整えていく段階に入ると思うが、その作業の中核となる専門職員を育てることもポイントだ」(赤沢宏平新潟大医歯学総合病院教授)。県病院事業局は11年にわたりアドバイザーと随意契約しているが、行政職の中に専門家がいなければ、メーカーなど外部の意向が強く働きかねない。

■「過剰予算だ」
 3病院のシステム統合は病院経営が赤字に苦しむ中、3年間で37億1800万円を投じる事業だ。必要な措置とはいえ、県民目線で言えば割高感はある。導入する機器などが増えるとされているが、YCC情報システム(山形市)は公開質問状で「(各病院に電子カルテを導入した前回と比べ)過剰予算だ」と主張する。まして、事業の契約先は1事業者だ。

 医療IT業界は大手メーカーの寡占状態にあると言っても過言ではない。実情を知る関係者はこう漏らした。「メーカーがそれぞれのシステムを広げようとしてきたのが業界の現状だ。(県病院事業局は)メーカーの利権争いに巻き込まれているようなものだ」。メーカー変更はリスクが伴うため、一度契約すれば次のシステム統合時に事実上、巨額の“随意契約”となる可能性をはらむ。

 そのはざまで、県内のIT事業者は事業を展開している。「IT業界としての年間売り上げで、山形は東北最低クラス」と、県内のある事業者は指摘する。国の情報通信業基本調査(2016年)によると、ソフトウエア業などの売上高は東北で5位。企業数の少ない秋田を辛うじて上回るだけだ。「結果的に売り上げが県外に流れている」。系列の県内事業者が下請けを担えるとも限らず、メーカー任せの部分が大きい。

■地方創生に逆行
 近年、行政の発注は分離分割して、県内業者が請け負うことができるように配慮されている。それは地方創生の趣旨にも合致する。しかし、今回は時代に逆行するような一括発注で、巨額の県費が一つのメーカー、または系列の事業者に行く。「他の産業では分離分割方式や入札企業のランク分けをしてうまくやっている。業界を育てる気持ちがあるなら、山形県もできるはずだ」(県内のIT事業者)。今回の経緯を見る限り、当局に地元業者を育てるという気概は全く感じられない。

 間もなくシステム統合に向けたメーカー統一の入札が公示される。「有識者も(入札方法に)納得している。県民に説明しながら、粛々と進めていただくのがいい」。吉村美栄子知事は記者会見でそう述べたが、疑問の声が残る中での見切り発車と言えないか。「粛々と進める」だけの議論が尽くされたとはとても言い難い。
(県立3病院システム統合問題取材班)

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