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覚悟は?ペット捨てられる事例なお 「家族の一員」県内事情、保健所「ゼロへ努力」

2018年06月18日 11:39
置賜保健所に収容された野良猫。新たな飼い主が見つかるのを待ち続けている=米沢市
置賜保健所に収容された野良猫。新たな飼い主が見つかるのを待ち続けている=米沢市
 「家族の一員」として犬や猫を飼う人が増えている。動物愛護意識は年々、高まっているが、人間の都合に翻弄(ほんろう)されている一面もうかがえる。保健所職員の目を通し、昨今のペット事情を探った。

 「飼えなくなった時、どうしますか」。県内の保健所に収容された犬や猫の譲り受け希望者全員に担当者は決まってこの質問をする。そして明確な回答を求める。多くの希望者は答えにちゅうちょするという。「たぶん大丈夫」では譲渡を認めない。新たな“家族”を迎えようとしている人に対し、ぶしつけな質問かもしれないが、理由がある。置賜保健所主査の後藤芳恵さんは強調した。「飼い始める時は『飼えなくなる時』に意識が向かないから…」

 2006年に動物愛護法が改正され、極端に言えば殺処分されていた野良猫や野良犬が「生きる機会を尊重する」とされた。これを受け、本県では08年から保健所が収容した犬、猫の譲渡がスタート。飼育を希望する人に対し、事前講習を経て無償譲渡している。万が一、育てられなくなった場合の引き取り先を明確にした後に。

 置賜保健所の場合、16年度は迷子などを含む「捕獲」、やむを得ない理由で育てられなくなった「引き取り」を合わせて23匹の犬を収容、うち15匹が飼い主に戻り、6匹を新たな人に譲り渡した。残る2匹も17年度中に新たな引き取り先が見つかった。猫の場合は264匹を引き取り、58匹を譲渡した。特に生後間もない猫の場合、母猫がいないと乳が飲めず、衰弱が止まらなくなる。やむを得ず殺処分することもある。

 一方で、動物愛護精神の高まりと、1人暮らしなど少人数世帯の増加を背景にペットは所有物から「家族の一員」となりつつあることも事実だ。譲渡希望者が挙げる理由で近年、目立つのが「子どもが独立した」や「夫、妻が亡くなった」だ。共通するのが「寂しさ」。いわば、ぽっかりあいた心の穴を埋めてくれる存在。だからこそ、そうした人たちは「家族として大事にしてくれる」と同保健所課長補佐の中島克則さんは話す。

 以前は庭で飼っていた犬が逃げても「いつか戻ってくる」とほったらかしにしていたために、「迷い犬がいる」と保健所に通報されるケースが目立った。最近は「いなくなった」と心配した飼い主からすぐに保健所に捜索依頼の連絡が入るという。

 捨てられたり、けがをしたりした犬、猫の収容数は減っているが、改善の兆しがないものもある。路上放置された猫の死骸だ。県によると、全県の回収数は12~16年の5年間でみると、年間約3500匹で横ばいだ。

 犬とは違い、猫は基本、放し飼い―。根強いこの意識の裏側に車にはねられ、犠牲になっている猫の存在が隠れている。後藤さんは「屋内で飼うことが望ましいが『猫は自由気ままな生き物』との考えが多く、対策が行き届かない」と話す。

 飼い主の意識が向上しているとはいえ、悪質なケースはなくならない。「山の中に迷い犬がいる」「たくさんの子猫が家の前の段ボールに入れられていた」など、モラルが疑われる通報は後を絶たない。

 重度な皮膚炎で頭皮などがただれ、毛玉だらけで捨てられていた犬もいる。保健所の施設内に収容されたこうした犬たちの目はうつろで、人間で言えば放心状態のようだという。猫の場合は新たな飼い主を求めるように、甘えた声で鳴く。その声は「耳から離れない」。

 「保健所で収容する犬、猫の数はゼロにならないかもしれない」。後藤さんと中島さんはこう指摘する。それでも立ち止まることはできない。「地味ながらも一歩ずつゼロになる努力は続ける必要がある」。2人はかみしめるようにつぶやいた。

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