社説

栃木の雪崩、8人死亡 正しく恐れる訓練必要

 条件に恵まれれば、早春の山歩きは実に爽快である。

 足元は、日中と夜の温度差によって締まった堅雪となり歩きやすい。葉を落とした木々はまだ芽吹きの前で、夏季とは異なり視界が広がる。山形市周辺の山からであれば、晴れた日には神々しいばかりに雪を冠する飯豊、朝日連峰、さらに月山、遠くは鳥海山まで見はるかすこともある。

 ところがいったん荒天に見舞われると一気に冬山に逆戻りする。27日朝、栃木県那須町のスキー場周辺も、同様の状況だったはずだ。そんな中で「春山安全登山講習会」に参加していた高校生山岳部員と顧問計8人が雪崩に巻き込まれ、命を落とした。

 気象庁によると、那須町では27日午前1時現在に0センチだった積雪が、午前9時現在で33センチを観測していた。天候急変を受けて、事故を回避する手だてはなかったのか、非常に残念だ。栃木県教育委員会は原因を究明し、悲劇を繰り返さないための対策を講じる義務がある。

 講習会は、栃木県高体連が25日から2泊3日の日程で開いていた。同県内の高校7校の1、2年生51人と教員11人が参加。そのうち生徒46人と教員8人が積雪をかき分けながら歩くラッセル訓練中の27日午前8時半ごろ雪崩が発生し、先頭部分にいた大田原高の部員と顧問が犠牲になった。

 季節外れの積雪のため当初予定していた茶臼岳登山を中止し、ラッセル訓練に切り替えたところを襲った雪崩。引率教員の中には栃木を代表する冬山の専門家がいたという。さらに踏み込んで訓練中止まで決断できなかったのか。28日に現地調査したNPO法人「日本雪崩ネットワーク」(横浜市)の出川あずさ理事は「目視でも分かるほど、雪崩の起きやすい斜度や気候条件がそろっている典型的な雪崩発生区」と指摘した。今回は前兆なしにいきなり起こる表層雪崩とみられているが、現場周辺で雪崩が発生し得る危険性は前もって認識できなかったのか。さらに、遭難時に位置を特定するビーコン(電波受発信器)を携行する必要はなかったのか。この辺りを徹底的に分析する必要がある。

 本県の高校には15の登山・山岳部があり、栃木の事故と同じ時期に県内の山で活動していた生徒たちもいた。県教育委員会は28日、県内全ての高校に冬山登山の事故防止に関する緊急通知を送り、積雪が残るこれからの時期は、最新の気象状況を適切に把握することなどを求めた。東北地方に位置する山々だけに、春先だからといって油断してならないのは当然のことである。

 今回の雪崩事故を受け、栃木県教委は高校生の冬山登山全面禁止の検討を始めるという。一方で、自然に潜む危険性に過剰反応するのではなく、正しく恐れる姿勢も必要だろう。本県では冬休みや春休みに、多くの高校が限定された山域で部員の積雪期技術習得を行い、雪洞作りやルートの探索、スキーを使った登山技術、アイゼンやピッケルなどの使い方を学んでいる。それらの訓練を重ねた上で雪山に親しむ方が、現実的な自然との接し方ではないだろうか。

(2017/03/30付)
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