社説

日米貿易協議の行方 米の真意まず見極めよ

 「米国には環太平洋連携協定(TPP)への復帰を要請する。2国間の自由貿易協定(FTA)は日本の念頭にはなく、TPPが最善だ」(安倍晋三首相)

 「日本に貿易障壁がある。米国が拒否できないような好条件が提示されない限り、TPPには復帰しない。日本と一対一での通商交渉を望む」(トランプ米大統領)

 米国で2日間に及んだ首脳会談や会談後の共同記者会見で、安倍首相とトランプ大統領が発した言葉だ。北朝鮮の核・ミサイル開発の放棄や日本人拉致事件の解決に向けて連携を確認する一方、通商・貿易分野では両国の隔たりが鮮明となった。

 両首脳は今回の会談で「自由で公正、かつ相互的な貿易」を実現するための閣僚級協議の新設で合意した。閣僚級協議のトップは、日本側がTPP担当の茂木敏充経済再生担当相、片や米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表がそれぞれ務める。通商交渉では強硬派として知られるライトハイザー氏は、日本にとって手ごわい相手となる。日本がこの協議を、米国のTPP復帰の足場としたいのに対し、米国は2国間のFTA交渉に日本を引き込む手段にしようと考えているのは明白だ。

 大量輸入が安全保障上の脅威になっているとして、米国が日本を含む同盟国を対象に先月発動した鉄鋼とアルミニウムの輸入制限についても、トランプ氏は「日本との貿易協議で合意に達しない限り除外しない」と撤回に応じなかった。米国は今後、農業分野での関税の引き下げや自動車などの輸入拡大策を日本に要求してくるとみられ、農業県の本県にとっては看過できない状況が予想される。

 ただし、今回の会談で米国にFTAの交渉入りまで押し切られることがなかったのは、評価に値するポイントといえよう。日本にとって最悪の展開に陥ることなく、乗り切った形だ。

 トランプ氏の通商政策につかみどころがないのは周知の事実だ。TPP復帰に関する発言にしても、今年1月に「米国にとって、とても良い内容になるならばTPPをやる」と言ったかと思えば、日米首脳会談後の共同会見では「TPPには復帰しない」と述べるなど、二転三転している。

 今回の会談を巡っては「トランプ氏は日本から何らかの譲歩を得ようというよりは、秋の米中間選挙へ向けて対日赤字解消に努めているという政治的メッセージを発信したいのだろう」と分析する専門家もいる。日本はトランプ氏の発言の変化に一喜一憂するのではなく、真意や背景を見極めるべきだ。

 いずれにしても、保護主義色の濃い米国の通商政策は当面続くとみていい。これを放置することはできず、米国抜きの「TPP11」に署名した各国と共に、多国間の自由貿易体制の必要性を説き続けることが重要だ。半面、現実的な対応も必要になる。国力を背景に2国間交渉を志向する米国と、どう渡り合っていくのか。トランプ氏は共同会見で、米国製兵器の購入を改めて要求した。貿易交渉に安全保障政策なども絡ませてくる姿勢も踏まえ、戦略を練り直す必要がある。

(2018/04/25付)
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