社説

山響常任指揮者に阪氏 オペラ演奏に新風期待

 46年の歴史を誇る山形交響楽団に、オペラ公演という新たな個性が加わることにつながるだろう。

 伝統あるドイツ、スイスの歌劇場で専属指揮者や音楽総監督として活躍してきた阪哲朗(ばんてつろう)氏が来年4月から、山響の常任指揮者に就くことになった。阪氏の就任に合わせ、現在音楽監督の飯森範親氏は芸術総監督となる。山響と阪氏は2000年以降共演を重ね、07~09年度に首席客演指揮者を務めた。自身は京都市育ちとはいえ、父が新庄市、母は山形市の出身である。クラシック音楽はとかく敷居が高いと思われがちだが、このゆかりは県民と山響をより近づけるのに役立つのではないか。

 就任記者会見で、阪氏は「手作り感」へのこだわりを強調した。「ハンドメード以外のものを自分はできない」と自己規定した上で「ライブ感、スリリングさを大切にしたい」と述べた。

 阪氏が言いたかったのは「クラシックの演奏という行為は、極めて人間的なものだ」ということだろう。演奏の基になるのは五線譜に書かれた音符と休符である。それが、生身の演奏家の動きを通して音になる。まずは楽譜という記号を個々の演奏家が読み取って音のイメージを固め、次にさまざまな楽器の音を重ね合わせるというプロセスを経て、初めて聴衆に届くわけだ。だからこそ音楽は人間の感受性によって、表現のありようが大きく変化する。

 山響では飯森氏が04年に常任指揮者、07年からは音楽監督に就いている。第1バイオリン8人、管楽器は2管(オーボエ、フルートといった管楽器が2人ずつ)の小規模編成を逆手に取って、小サイズのオーケストラが普通だったモーツァルトの時代の演奏を極めるという方向性を打ち出した。飯森氏と山響は、モーツァルトが活躍した18世紀当時の演奏スタイルを生かして交響曲全47曲を音にする演奏会シリーズを、07年度から8年間かけて完結させた。演奏はCD化され、昨年度のレコード・アカデミー賞特別部門(企画・制作)に選ばれた。

 飯森氏の音楽の特徴は楽譜の縦の線、つまり各楽器のリズムをきちんとそろえることだ。これに対して阪氏は、横の線、つまり旋律の流れを大切にする―と会見で語った。歌が基本のオペラを本場の劇場で長年指揮してきた阪氏の特徴を、端的に表している。来年7月にはオペラの名曲を集めたガラコンサートも企画している。飯森氏が整えてきた音に阪氏の持ち味がブレンドされることで、山響に新たな表現力が備わるよう期待したい。

 山響にはさらに、首席客演指揮者として鈴木秀美、ラデク・バボラークの両氏がいる。鈴木氏は古楽演奏のスペシャリストで著名なチェロ奏者でもある。山響では、交響曲というジャンルを確立したハイドンの作品を中心に質の高い演奏を披露してきた。バボラーク氏は名門ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のソロホルン奏者を務めた世界最高峰の演奏家だ。指揮者としても、同郷のチェコの作曲家に新作を委嘱し山響と世界初演するなど意欲的に活動している。飯森、阪、鈴木、バボラークの4氏態勢で、山形の音楽文化をさらに高めてほしい。

(2018/12/19付)
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