社説

トランプ政権1年 分断と混乱が続くのか

 国際社会はその発言と行動に、揺さぶられ続けるのか。分断と混乱がこのまま世界を覆ってしまうのか―。

 トランプ米大統領が就任して、20日で1年。「米国第一主義」を原則とする政策は国内外を混乱させている。過激な発言は敵対者をつくり、「米国を再び偉大に」という公約とは裏腹に、必要な政策の立案・遂行を困難にしている。

 トランプ氏の支持率は40%を切り、就任1年の大統領では戦後最低レベルだ。ただ与党共和党支持層の支持率が8割を超えて底堅い一方、民主党支持層は1桁と深刻な米国内の分断をも表している。トランプ氏の政策や言動は、特に一部の白人支持層が歓迎するものが多い。秋の中間選挙での与党共和党勝利や、2020年の大統領再選を意識していることが明白だ。これでは長期的な国益や世界の繁栄を築く意図は期待できない。

 外交では環太平洋連携協定(TPP)やパリ協定からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉開始など、これまで積み上げてきた国際取り決めの軽視が目立つ。多国間協調への関心が乏しく国際合意をほごにする姿勢は米国の威信低下を招いた。特定イスラム圏諸国からの入国制限やアフリカ、カリブ海諸国に対する侮辱発言など、人種差別、白人至上主義的な態度は物議を醸した。

 とりわけ世界を驚かせたエルサレムのイスラエル首都認定には、親イスラエルの米国内世論を見据えた打算が見え隠れする。中東の将来を描いた上での政策とは到底思えない。北朝鮮の核問題を巡る金正恩朝鮮労働党委員長との過激で幼稚な応酬は、世界を幻滅させた。世界のリーダーとして国際秩序を築いてきた米国が、役割を放棄したに等しい。

 内政面は、目立った成果がない中で30年ぶりといわれる税制改革を実現した。しかし減税効果の大きい富裕層を除けば長期的な恩恵に乏しく、税収減で財政赤字拡大の懸念も指摘されるなど、経済の長期展望に立ったものとは言えまい。米経済は好調だがトランプ氏の政策が功を奏したとみるのは早計だ。メディアとの対立も深めるが、自らの支持層が反発するCNNやニューヨーク・タイムズ紙などの伝統メディアを敵に回す手法には、選挙で有利に働くとの本音が透ける。

 トランプ氏にとって最大の懸念は、ロシアゲート疑惑の捜査だろう。包囲網は狭まりつつあり、捜査の行方によっては政権の安定性に疑問符がつく。また政府高官ポストも多くが空席のままで、十分な政策遂行が不可能な状態だ。とはいえ中間選挙を控えた今年の米国は政治色が強まるため、視線が国内だけを向くトランプ氏の政治スタイルに、むしろ拍車がかかることが予想される。

 分断と混乱の継続は米国の力をますます弱体化させる。憂慮されるのは、国際的なパワーバランスが崩れることだ。中国やロシアの存在感が増し、日本の立ち位置にも変化が生じるだろう。北朝鮮問題や対中国政策、経済・貿易など多くの分野でトランプ氏の言動に左右されている日本は、従来の外交姿勢を続けるか、米国頼みでない道を模索するのか。世論対策を優先する米国との付き合い方を、改めて考える必要がある。

(2018/01/20付)
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