社説

廃校舎の利活用 運営の持続性意識して

 寒河江市は廃校となった旧田代小を宿泊施設に改修し、住民主体の地域づくりの拠点として活用する。来年度に着工し2018年春のオープンを目指す。運営の中核を担う「支配人」は地域おこし協力隊員を充てることにしており、現在公募中だ。

 少子化を背景に全国で学校の統廃合が進み、使われなくなった校舎の活用が国レベルの課題となっている。文部科学省は廃校に関する情報を集約し、民間企業やNPO法人など活用希望者に提供する「未来につなごうみんなの廃校プロジェクト」を展開している。同省の資料によると全国では毎年500校前後の廃校が発生し、うち約7割で、体験交流施設や文化施設など他用途への転換が図られているという。

 各省庁が用途に合わせた補助制度を設け転用を後押ししていることもあり、本県でも近年、活用の幅が広がっている。高畠町の旧時沢小は、大人がビジネスや技術開発などさまざまな分野の講義を受ける「熱中小学校」に様変わりした。NPO法人が多彩な講座を企画している。大江町の旧七軒西小は宿泊機能を有する山里交流館「やまさぁーべ」となり、県内外の利用者に豊かな自然体験プログラムを提供している。

 民間企業の利用も増えてきた。真室川町の旧及位中は地元製材会社が工場に転用。山形大と連携し農作物栽培実験にも挑む。舟形町の旧長沢小は、IT交流施設「長沢集学校」として再出発する。

 地方では中山間地域の過疎化に伴う廃校が大半を占めており、校舎の活用策を考える場合は、地域の将来像を明確にすることが重要となる。西川町は17年度に旧大井沢小中学校を宿泊可能な町環境自然学習センター(仮称)に再整備する計画だが、これは「自然教育学習の先進地を目指す」という同町の重点目標が反映されている。

 地域の将来ビジョンと併せて欠かせないのは持続可能な運営組織づくりだ。特に、住民主導で運営する場合、中心となって活動する人たちの高齢化とともに事業の継続が難しくなることが想定される。金山町の旧金山小谷口分校を活用し、農村体験交流合宿やそば店を展開してきたNPO法人は今月、20年間の活動を終えた。廃校活用のモデルケースとして全国から注目された同施設でさえ高齢化で新たな人材確保が困難になったという。幸い、そば店の営業は運営母体が代わって継続される見通しだ。

 冒頭で紹介した寒河江市の田代地区は高齢化率が50%近い。「里山ホテル」への転用構想は、旧校舎で地産地消レストランを営業してきた地元住民らがまとめた地域づくり計画に基づく。運営母体となるべくNPO法人も設立された。市の担当者は「まだ地域の体力が残っているうちに手を打つ」と話す。裏を返せば、今が地域の瀬戸際ということだろう。

 各地で廃校が増え「元学校」という“器”の目新しさが薄れる中、どのような利活用も容易ではないだろうが、旧校舎の再生は地域の希望だ。“2度目の廃校”は立ち直りがたい打撃となる。長く存続させるため、常に新しい参画者を迎え入れることを意識しておきたい。

(2017/02/23付)
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