社説

トランプ氏の企業介入 経済活動をゆがめるな

 トランプ次期米大統領がトヨタ自動車のメキシコ新工場建設を批判し、方針変更を迫った。トランプ氏は米企業に相次いで同様の圧力をかけているが、政治権力者による企業経営への介入は経済活動をゆがめ、多くの弊害をもたらすだけだ。次期米政権の経済運営を強く憂慮せざるを得ない。

 トランプ氏は米国の雇用確保を優先する立場から、トヨタについて「米国に工場を造るか、巨額の関税を払うかどちらかだ」とツイッターに投稿した。

 これまでも米企業のメキシコ生産を次々に名指しで非難しており、空調機器大手キヤリアが計画を一部変更し、自動車大手フォード・モーターがメキシコ工場建設を撤回している。

 トヨタは直ちに米国での実績を強調する声明を出すとともに、豊田章男社長が9日記者会見し、今後5年間で米国に100億ドル(約1兆1600億円)を投資することを明らかにした。米経済への貢献を打ち出すことで批判を封じ、沈静化を図りたい考えだ。

 トランプ氏の批判は“無知”に基づいていると思われる。トヨタのメキシコ新工場建設は米国からの生産移転ではなく、新規の投資だ。米国にはこれまでに220億ドルを投資し、現在は13万6千人の雇用を抱えており、2015年には米国で生産した16万台の車を輸出した。

 トランプ氏のこうした発言の根本にあるのは、保護貿易主義と自国第一主義である。米国から海外への生産移転を批判する一方、中国やメキシコからの輸入に高関税を課すなどと主張している。今回は、その上に個別企業への介入が加わった形だ。

 しかし、米企業にメキシコでの生産計画を取りやめさせても、米国の雇用が増えるとは限らない。米企業がメキシコなど海外で生産するのは、主に賃金水準の低さが理由であり、合理的な経営戦略である。それができなくなれば、米国の産業の生産性や競争力が低下し、かえって雇用が減るかもしれない。

 そもそも各国の製造業は現在、部品供給網で結び付いている。メキシコで生産する米企業も、部品の多くを米国から輸入しており、米国の輸出にも寄与している。メキシコ生産だけを切り離して問題にするのは無意味で、トランプ氏はこうした現実を理解していないようだ。

 トランプ氏の介入は、米国の伝統であるルールに基づいた資本主義とは全く異質であり、発展途上国などで見られる縁故資本主義と変わらない。それが常態化すれば政策の予見可能性が低くなり、政治と企業の癒着や不正の温床となる。米国への投資は不確実性が高いとして外国企業は投資を縮小するかもしれない。

 さらに心配なのは、次期米政権が高関税などの保護主義的な政策を本当に発動するかもしれないことだ。そうした政策は報復措置の連鎖を招き、保護主義を世界に広げる懸念がある。そうなれば世界経済にとって大きな打撃である。「トランプ流」の経済運営が暴走しないか、警戒を続けなければならない。

 日本政府は毅然(きぜん)とした姿勢で経済活動への不当な介入に反対し、自由貿易の価値を主張するべきだ。

(2017/01/11付)
最新7日分を掲載します。
文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内7市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

週1回、ふるさとの話題をお届け

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2017年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2017年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報、おくやみ… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から