社説

参院6増法案 改正の理念が見えない

 自民党は参院選の「1票の格差」是正に向けた公選法改正案を参院に提出した。従来、解消を主張していた「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区を残し、定数を現行の242から6増やして、比例代表に「拘束名簿式」の特定枠を設ける内容だ。合区対象県で選挙区に擁立できない県の候補を特定枠で優遇する狙いであろう。党内の不満解消を優先した案であり、選挙制度はますます複雑になる。

 この案からは、衆院との二院制の中で、参院の果たすべき役割は何か、そのための代表を選ぶ制度はどうあるべきかという理念が見えてこない。

 参院は本来、衆院の政党対立から距離を置き、中長期的な視点から法案を審議し、行政を監視する役割が期待される。「良識の府」「再考の府」と呼ばれるのはそのためだが、現実は衆院同様の政党対立が持ち込まれ、「衆院のカーボンコピー」と指摘される。参院の独自性、「あるべき姿」のための選挙制度を考える抜本的議論に立ち返るよう求めたい。

 今回の選挙制度改革は、2013年参院選の「1票の格差」を「違憲状態」とした最高裁判決を受けたものだ。15年に改正された公選法は合区を初めて導入。同時に、付則で19年の参院選に向けて「選挙制度の抜本的な見直しを検討し、必ず結論を得る」と明記した。

 来年の参院選までの周知期間を考えれば時間の猶予は少ない。しかし今回の進め方は拙速ではないか。選挙制度に関しては幅広い合意が望ましいが、参院各会派の代表者懇談会で自民党案に反対が出ると、同党出身の伊達忠一参院議長は協議を打ち切った。野党は反発しており、懇談会に議論を差し戻すべきだろう。

 自民党案は問題点が多い。一つは合区の扱いだ。同党は大都市部へ人口集中が進む中で「人口減少地域の声も国政に反映させる必要がある」と主張、各都道府県から1人の議員を選出できるようにする憲法改正案をまとめている。合区を残す今回の案との整合性はどうなるのか。

 もう一つは比例代表に特定枠を設けることだ。現行の比例代表は、政党が候補者に順位を付けず、個人の得票順で当選者が決まる「非拘束名簿式」だ。今回の案はその一部に、事前に定めた順位に従って当選者を決める「拘束名簿式」の特定枠を導入する。合区対象県の候補優遇という狙いが透けて見える。

 定数増は真正面から議論すべきだ。自民党案は議員1人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の定数を2増やし、比例代表も4増する。埼玉選挙区の定数増で「1票の格差」は当面3倍未満に抑えられるが、抜本改革とは言い難い。

 比例代表の4増は特定枠を設けるのに伴う措置だろう。一部野党は「身を切る改革に逆行する」と定数増に反対する。ただし国民の代表である議員の数を増やすこと自体は一概に否定されるべきではない。国民の理解が得られる定数の考え方を示し、理由を丁寧に説明すべきだ。

 参院選挙制度改革を巡り、故西岡武夫参院議長は全国9ブロックの比例代表制を提唱し、公明党は11ブロックの大選挙区制を提案した。抜本論議の材料になるものだ。自民党案を再考し、参院の在り方の本質を踏まえた議論を求めたい。

(2018/06/19付)
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