社説

7~9月期GDP 内需中心の成長目指せ

 日本経済は約16年ぶりに、7四半期連続のプラス成長を記録した。しかし、力強い景気拡大の実感には程遠い。内需の両輪となる個人消費と設備投資が弱く、輸出の回復に主導された景気拡大というのが実情だろう。内需中心の自律的な成長を目指す必要がある。

 内閣府が発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比0.3%増、年率換算1.4%増となった。好調な世界経済を追い風に輸出が1.5%増と、内需の不振を補って成長をけん引した。最近の景気拡大は高度成長期に57カ月続いた「いざなぎ景気」を抜き、戦後2位の長さになったとみられる。

 企業業績は過去最高益の勢いで改善が進んでおり、株式相場はバブル崩壊後の最高値圏にある。日銀山形事務所が今月発表した県内経済概況(月例)も、県内景気が「着実に回復している」との基調判断を8カ月連続で維持した。

 だが、外需頼みの成長は脆弱(ぜいじゃく)だ。欧米は金融引き締めの傾向にあり、中国経済の減速懸念といったリスクもある。海外経済が揺らげば、日本経済も失速する恐れは否めない。

 問題は、好調な企業業績が家計に恩恵をもたらし、消費拡大へとつながる好循環がみられない点にある。

 GDPの6割を占める個人消費は前期比0.5%減で、7四半期ぶりのマイナスとなった。8月の天候不順が影響したとみられるが、前期に0.7%増の伸びを示した好調な流れを持続できなかったこと自体、個人消費の基調がまだまだ弱い証しといえる。

 日本経済が内需中心の持続的な成長の経路に復帰し、デフレ脱却を実現するための最大の鍵が、個人消費の拡大であることは明らかだが、期待外れが続いている。その大きな要因は、雇用の大幅な改善が続き人手不足が一段と強まっているのに、賃金が思ったほど上昇していないことである。企業の好業績が消費拡大を促すだけの賃上げにつながらず、好景気の実感を乏しくしている。

 現時点で2.8%の完全失業率にはまだ低下の余地があるため、賃金がなかなか上がらないとの指摘もある。失業率が十分に下がれば人手不足がさらに強まって賃金上昇が加速し、消費拡大から「良い物価上昇」、デフレ脱却への流れが期待できようが、これは最も楽観的なシナリオだ。内需が盛り上がらず、ひ弱な成長が長期間続くこともあり得る。

 人口減による市場縮小などから国内経済の安定的な成長が期待できず、企業は賃上げや設備投資に慎重にならざるを得ない状況だ。一方の個人消費は、賃金が伸び悩む中で消費者が節約志向から抜け出せず、子育てや老後を巡る将来的な不安から家計支出を抑制している。景気の自律的な回復とデフレ脱却をいかにして実現させるのか。政府、経済界ともに知恵を絞らなければならない。

 安倍晋三首相は年内に新たな経済政策パッケージを示すと言明した。安倍政権は企業の活力を引き出し、内需を喚起するための環境整備を進める必要がある。一層の賃上げに結び付く規制緩和や構造改革、消費志向を刺激する税制といった政策的な後押しが求められる。

(2017/11/21付)
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