社説

「米沢牛」地理的表示登録 新戦略のキックオフに

 「米沢牛」が地理的表示登録された。品質や生産体制に国のお墨付きが与えられ、名称は国際的な保護の対象となった。置賜8市町とJAなどで構成する米沢牛銘柄推進協議会は30日に米沢市で祝賀会を開く。この日を新たな生産、販売戦略構築へのキックオフとしてほしい。

 地理的表示保護制度は品質などの特性が産地と結び付いている産品について、名称を知的財産として保護する。農林水産省は農林水産物や食品、国税庁は酒類などを登録または指定している。「米沢牛」は3日に「特産松阪牛」(三重県)「前沢牛」(岩手県)などと同時に農水省が登録した。2015年に「夕張メロン」(北海道)や「神戸ビーフ」(兵庫県)などが初めて対象となって以来、同省の登録は今回で28品目となった。

 産地のメリットは何か。まずはブランド価値の向上だ。農水省は厳格な基準を設け、一般からの異議申し立てや有識者の意見を聞いて登録の可否を決める。品質やそれを維持する体制は「本物」としてアピールできる。もう一つが国際的な名称の保護だ。地理的表示保護は海外で広く認知されており、登録された産品は世界100カ国以上で保護の対象となり、不正使用は国が取り締まる。

 「米沢牛」の知的財産を巡っては、中国と米沢市内の企業が10年にそれぞれ中国商標局に登録を出願。JA山形おきたまは対抗策として12年に地域団体登録を同局に申し出た。3者の申請は無効または拒絶され、同JAがその後に出願したロゴマークなどの登録も昨年5月までに退けられた。一連の騒動の中、関係団体は米沢牛銘柄推進協議会として地理的表示登録を目指す方針を打ち出し、一昨年9月に申請。今回、ようやくブランド保護の道筋がついた。

 農水省で行われた登録証授与式で、礒崎陽輔農水副大臣は牛肉3件の登録に言及し「日本が世界に誇る黒毛和種の販路拡大と輸出に力を入れてほしい」と申請団体を激励。同JAの木村敏和組合長は「地域活性化に貢献する。全国各地の皆さん(肉牛関係者)と共に海外戦略にも取り組みたい」と応じ、課題に挑む姿勢を鮮明にした。

 知名度が高い神戸ビーフの年間出荷頭数は約5千頭、松阪牛は約7千頭に上る。これに対して米沢牛は2800頭程度。増頭には子牛の確保が必要だが、全国的な価格高騰という現実がある。市によると、繁殖から肥育まで地元の「置賜生まれ」の米沢牛は全体の3割以下。同協議会会長の中川勝米沢市長は記者会見で「まずは3千頭まで増やしたい。3市5町で生産体制を確立し、置賜生まれの米沢牛を増やしていく」と強調した。

 販売戦略も欠かせない。「松阪牛」のうち、米沢牛と同時に地理的表示登録されたのは産地内で900日以上肥育された「特産松阪牛」だ。年間出荷は約300頭で全体の4%程度。輸出を見据え、価格向上を目指す明確な意図が見て取れる。輸出を考えた場合、国によって月齢上限や食肉処理場などの規制があり、きめ細かな対応が必要だ。どう品質を高め、関連産業の発展を図るのか。登録を機に関係団体が一丸となって新たな戦略を構築することが求められる。

(2017/03/20付)
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