社説

山形で現代アート展 あるがままに味わって

 現代アートと聞けば、「小難しい」とか「理屈っぽい」といった単語が反射的に浮かぶ方が多いかもしれない。

 だが、現在山形美術館(山形市)で開催中の現代アート展は違う。会場に入ると真っ先に目に入るのはカラフルな水玉模様の衣装を身に着け、陽気にバンザイをする高さ3メートル近くの像「ハーイ、コンニチワ! ヤヨイちゃん」。その傍らに立つのはやはり水玉模様の犬「ハーイ、コンニチワ! ポチ」。作品を背に記念撮影することができ、家族連れでにぎわっている。作者は草間弥生さん。日本を代表する現代美術家で昨年文化勲章を受章、今年米タイム誌が発表した「世界で最も影響力のある100人」に日本人でただ一人選ばれた。でも作品からは「その道一筋の巨匠」といった堅苦しさはみじんも感じられない。

 展覧会は題して「日本の現代アートがここにある! 高橋コレクション・マインドフルネス2017」(8月27日まで)。鶴岡市生まれで東京都在住の精神科医高橋龍太郎さんの2500点を超えるアートコレクションから118点を選んだ。

 草間さん以外の展示作家を一部挙げてみよう。顔に険があるようにも、すねているようにも見える子どもの絵で知られる奈良美智さん、高級ブランド「ルイ・ヴィトン」とコラボレーションしたほかポップアートから大作屏風(びょうぶ)まで手掛け世界でも評価の高い村上隆さん、日本の絵画の伝統をそしゃくしながら現代社会への鋭い批評性を盛り込む会田誠さんと山口晃さん。本県関係では、自身をモデルにした裸体画などで注目を浴びる梅津庸一さん(山形市出身)、日本画の大作に取り組む三瀬夏之介東北芸術工科大教授、同大出身の若手画家でエネルギッシュな作風の近藤亜樹さんと、そうそうたる顔触れだ。

 高橋さんは「日本の現代アートのレベルは世界でもトップクラス」という。著書「現代美術コレクター」で、高橋さんはその理由を次のように説明する。

 日本の社会が成熟するのに伴い、逆に国民一人一人の成熟の速度は遅くなり、思春期の期間が延びるようになった。そんな日本人が愛したものが漫画、アニメ、ゲームといったサブカルチャー。1990年代の半ばすぎ、サブカルチャーの影響を受けた若手美術作家が台頭してくる。一方で日本では古来、伊藤若冲や円山応挙のような超絶的な職人技も受け継がれてきた。サブカルチャーを土台に高い職人技で仕上げられた作品が、日本の現代アートというわけだ。

 本当の意味で現代アートを味わってもらうために高橋さんが提唱するのが、展覧会のタイトルにもなった「マインドフルネス」。新しい精神療法を示す言葉でもあり、美術鑑賞に当てはめれば「構えることなく作品に向き合い、本質に気付く」ことといえよう。先の著書で、例えばこんな心構えで見ては―と勧める。

 楽な姿勢を見つけ、目を一度閉じる▽絵に向き合い、あるがままに感じる▽体全体で「今の瞬間」を受け止める▽絵と自分の一体感を味わう。

 もちろんこれは一例。自分なりのやり方で、現代アートの精髄を自由に感じてはいかがだろう。

(2017/07/27付)
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