社説

豚コレラ感染拡大 防疫対策は待ったなし

 家畜伝染病である豚(とん)コレラの感染が広がっている。国内では熊本県で1992年に発生してからは発生がなかったが、昨年9月に岐阜県で続発。今月に入ってから長野、愛知、滋賀、大阪の4府県にも拡大したことが確認された。

 病原体の豚コレラウイルスは近年、中国やモンゴルで分離されたものと遺伝子が似ているという。アジアの他の国や地域で発生が続く中、日本は農場の衛生管理や輸入検疫によって、ウイルスの侵入を防いできた。だが国境を越える人の動きが活発になれば、連動してウイルスなどの病原体が入り込む危険性も高まるのは当然だ。発生の原因を探り、早急に防疫対策強化につなげるべきだ。

 豚コレラは豚とイノシシがかかり、ウイルス感染によって高熱や下痢などの症状が出る。致死率は高く感染力も強いとされる。人にはうつらず、感染した豚の肉や内臓を万が一食べても影響はない。

 米国で19世紀に初めて報告され、日本では1887年に北海道で、米国からの輸入豚に発生した事例が最初の記録だ。以来、1908年に沖縄と関東で約2万頭がかかるなど繰り返し発生してきた。

 日本の研究者の発見を基に優れたワクチンが開発され、69年から接種が始まると発生は激減する。2006年には接種が完全に中止され、国際獣疫事務局(OIE)から翌年、豚コレラの「清浄国」と認められた。

 清浄国になると非清浄国からの豚肉輸入を制限したり、他の清浄国に輸出できたりと経済的メリットが大きい。しかし昨年9月の発生を受け、日本は清浄国の資格が一時的に停止されている。

 感染予防にはワクチンが有効だ。しかし農林水産省は、衛生管理と水際対策の強化で封じ込めを目指す。ワクチンを使わなければ最後の発生から3カ月で清浄国に復帰できるが、使えばOIE規約により復帰に時間がかかるためだ。

 岐阜県と愛知県で野生イノシシが豚コレラにかかったことを受け、同省は捕獲活動への支援のほか、ワクチン入りのえさをまき、拡大を防ぐことも検討中だ。早期の封じ込めに期待したい。

 今回の発生をもたらしたウイルスは、旅行客の手荷物や国際小包によって入り込んだ可能性が指摘されている。豚コレラウイルスは熱には弱いものの、冷凍肉で4年以上感染力を保っていたとの報告もある。豚コレラ発生国から加熱していない豚肉製品を持ち込むことは禁じられているが、輸入検査は自己申告によるため、すり抜けが起こり得る。そうした食品が捨てられ、野生イノシシが感染し豚に拡大したのかもしれない。

 中国やモンゴルではアフリカ豚コレラという別の家畜伝染病が広がっている。こちらのウイルスも冷凍肉で1年以上感染力を維持するとの実験結果があり、同様のルートを警戒する必要がある。豚コレラと違ってワクチンがなく、侵入を許せばより深刻な事態が予想される。

 衛生管理は徹底すべきだ。最初の感染例が出た農場は、野生イノシシが豚に接触できる状況にあったなど管理の甘さが指摘されている。養豚の現場では外国から来た人たちも働いており、衛生管理の手法をきちんと伝える必要がある。

(2019/02/16付)
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