社説

日本、団体追い抜き「金」 科学と団結力の成果だ

 戦いの場で、選手たちが全力を出し切った末の栄冠が心を揺さぶるだけではない。たとえ個々の実力では及ばない点があるにせよ、科学的分析で改善点を見いだしチームワークを磨き上げることによって頂点に立った姿は、日本が今後スポーツ以外の分野でも世界としのぎを削っていく上で示唆に富むのではないか。

 平昌冬季五輪のスピードスケート女子団体追い抜きで日本がオランダを破り、金メダルを獲得した。3人で隊列を組んで滑る団体追い抜きは2006年のトリノ冬季五輪で初めて採用され、日本女子は上位で奮闘してきたが「金」は初めてである。決勝で見事な滑りを披露した高木美帆、高木菜那、佐藤綾乃の各選手、さらに準決勝で活躍した菊池彩花選手をたたえたい。

 オランダは言わずと知れた「スケート王国」。平昌大会のスピードスケートではこれまで6個の金メダルを得ている。女子団体追い抜き決勝も、ブスト、デヨング、レーンストラ各選手と今大会の個人種目メダリストをそろえた盤石な布陣だった。これに対して、日本のメンバーはエース高木美帆選手が1500メートルで「銀」、1000メートルで「銅」を手にしていただけである。日本は4年前、ソチ大会の団体追い抜き準決勝でもオランダと対戦し、11秒76もの差で負けている。

 ところが今回、日本はソチ大会覇者のオランダに五輪新記録で打ち勝った。要因の一つは効率的な隊列を徹底的に追求した科学的分析だ。国立スポーツ科学センター(JISS)での風洞実験で滑走姿勢や前後の選手間の距離、左右の幅をセンチ単位で変化させ、空気抵抗を最小限に抑える形を探ってきた。その結果、決勝では「隊列は今までの中で一番いいレース」と自己評価できる滑りができた。

 さらに、オランダを超える鍵となったのが先頭交代のタイミングだった。交代1回当たり、タイムは0秒2程度ロスするとされる。「(個の)力勝負ならオランダに届かない。冒険しなければ」と糸川敏彦コーチが語る通り、ソチで5回だった交代回数を今季は3回にまで減らした。高木美帆選手が急成長し、負担の大きい先頭を長く引っ張れる力をつけたことがこれを可能にした。

 練習は科学的であると同時に、過酷で厳格だった。15年、オランダからやって来たヨハン・デビット・コーチは最初のミーティングで「全てにおいて100パーセントでないと駄目だ」と告げた。「限界です」と訴える選手を、生理学的データを根拠に「まだいける」と鼓舞。体づくりのため起床、就寝、食事まで全ての時間を管理した。

 団結する環境も整った。ソチ大会後、主流だった大学や実業団ごとの練習を見直し、日本スケート連盟が所属の垣根を越えたナショナルチームを創設。4人を含む有力選手が年間300日以上ともに過ごし、一緒に滑り込んだ。

 山形中央高出のウイリアムソン師円、一戸誠太郎両選手が出場した男子団体追い抜きは5位となった。ウイリアムソン選手が「戦国時代」と表現していたように、大混戦の種目だった。さらに上を目指すために課題を洗い出し、データに基づいて克服していってほしい。

(2018/02/23付)
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