社説

平成最後の「終戦の日」 継承を忘れてはならぬ

 平成最後の「終戦の日」である。1945(昭和20)年8月15日に太平洋戦争が終わってから昭和は64年まで続き、その次の平成は今年で30年を迎えた。今年は戦後73年である。しかしこれほどの時を経ても、私たちが生きている社会は73年前のあの日とつながっているということを、改めて心に刻みたい。

 先の大戦で日本の戦没者は約310万人に上った。そのうち軍人・軍属は約230万人。ただし、これらの方々は戦闘中に亡くなったばかりではない。食料などの補給がなく、餓死したり病死したりした人が140万人と推計されている。いわば非業の死である。

 犠牲になったのは、戦地に駆り出された兵士だけではない。

 先月下旬、山形市で山形平和劇場の朗読劇「青洞の母」が上演された。題材になったのは、日本が実質支配していた旧満州(現中国東北部)の開拓団に加わった県人たちだ。45年8月9日に起こったソ連の対日参戦で突然の逃避行を強いられ、収容所生活を余儀なくされた様子を、体験者の証言を基に舞台化した。人々は日本軍に守られることもなく、逃避行の途中の空爆で、さらに収容所の過酷な環境で次々と命を落とす。収容所で親を失った子どもたちには残留孤児の運命が待っていた。

 このようにさまざまな状況、理由で亡くなった戦没者が家族や親族にいるという方々も県内には多いはずだ。「あの日とつながっている」と述べた理由の一つである。

 一方で最近、戦争に関する記憶の風化が指摘されている。直接経験した世代の高齢化が進むとともに、戦後生まれが1億人を超え、総人口の8割以上を占めていることが背景にある。本紙社会面で連載中の「平成最後の8月 いま語る―県内の戦争体験者たち」に登場する元兵士たちの年齢も、軒並み90代だ。

 これに対して、戦争に関する資料や証言をデジタルアーカイブとして長期保存し、次世代へ広く公開しようという動きがある。体験者の生の証言に触れる機会が今後ますます少なくなっていく中、有効な手段であろう。

 終戦間際から直後にかけて、日本はこの点でも間違いを犯していた。重要機密文書を焼却処分していたのである。処分の方針は45年8月14日の閣議で決めたとされ、公文書の焼却は軍部にとどまらず、他の官庁、地方にも徹底されたという。新聞社などマスコミの中でも資料を焼却していた社があった。記録や記憶をないがしろにすれば、歴史の正確な継承がおぼつかなくなるということを、自戒を込めて再認識したい。

 「あの日とのつながり」にはもっと直接的なものもある。例えば、憲法と私たちの関わりである。日本の敗戦を契機にして現在の憲法が作られ、戦後社会のバックボーンとなってきた。近年はその憲法の改正について議論される機会が増えている。9月の自民党総裁選では憲法改正が主要な論点になる見通しだ。ただし今の憲法が戦禍への反省から生まれた以上、改憲論議では先の戦争への評価を避けて通ることはできないだろう。その意味でも、歴史の継承は重要なのである。

(2018/08/15付)
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