社説

日ロ首脳会談 隔たり埋める戦略必要

 安倍晋三首相はロシアのプーチン大統領とモスクワのクレムリン(大統領府)で会談し、両国が北方領土で計画する共同経済活動の具体化に向けて、7、8月をめどに民間調査団を派遣するなど作業を加速させる方針で合意した。

 北朝鮮の非核化に関しては、緊密に連携し、米朝首脳会談の実現と成功を後押しすることで一致した。

 北方領土の返還と日ロの平和条約締結に向けて自らの任期中に前進に意欲を示す安倍首相は、プーチン大統領との個人的な信頼関係をてこに事態の打開を目指している。しかし、会談によって鮮明になったのは両国の根本的な立場の違いである。法的な問題や安全保障上の課題で両国間の隔たりは依然、埋まらないままになっている。日本側は戦略の基本的な見直しを検討すべきだ。

 共同経済活動は、北方領土で両国の官民が出資し、共同で事業を実施する。日本側は、共同事業を通じて信頼関係を醸成し、領土返還交渉につなげたい考えだ。海産物の養殖や観光、温室栽培など5項目が検討対象に挙がっている。

 だが、今回の会談でも具体的な事業化での合意には至らず、調査団の派遣にとどまった。障害となっているのは事業の際に適用される法制度の問題だ。日本側は、2016年12月に山口県長門市での日ロ首脳会談で首相が言及した、双方の法的立場を損なわない「特別な制度」での実施を目指す。一方、ロシア側は自国の法律の適用を主張し、対立する。当初から想定された問題点で、むしろ協議が進むにつれて明確になってきている。

 北朝鮮情勢に関しても日ロの立場の違いが際立った。北朝鮮の核開発は日本と同様、ロシアにとっても脅威である。安倍首相は会談後の共同記者会見で「北朝鮮の非核化を進めるのは日ロ共通の立場だ」と強調した。

 日本側が非核化を目標に、北朝鮮への圧力を維持する立場をとるのに対し、プーチン大統領は共同記者会見で「この問題は必ず政治的、外交的な手段の中で行わなければならない」と述べ、対話を重視する姿勢を示した。

 米朝と韓国に中国が加わった4カ国で交渉が進めば、日ロ両国はどう関与できるのかが問われることになる。その点では日ロの立場は似通っている。両国間で、さらなる意見交換が必要だろう。

 安倍首相とプーチン大統領の会談は第1次安倍政権時代を含め通算で21回目。プーチン氏は今年3月の大統領選で再選され、高い支持率を維持する。日本側は、北方領土返還と平和条約締結に向けて大統領の政治的決断に期待する。

 安倍首相は森友、加計学園問題などで支持率が低下、秋には自民党総裁選、来夏には参院選が控え、政治的基盤は必ずしも盤石とは言い難い。両首脳の置かれた政治的立場はやや異なる。

 プーチン大統領は25日の共同通信などとの記者会見でも、1956年の日ソ共同宣言に基づき、歯舞、色丹の2島引き渡しで決着させる方針を改めて示した。首脳間の信頼関係だけで、この基本的な立場を転換させるのは困難ではないか。両国の国益に資する打開策を見つけ出す戦略が求められよう。

(2018/05/28付)
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