社説

県水産試験場に新研究拠点 ブランド魚種増に期待

 鶴岡市の県水産試験場(笠原裕場長)に「おいしい魚加工支援ラボ」が完成した。魚介類の鮮度の保持やうま味を引き出すための新たな技術開発などを手掛け、庄内で水揚げされる海産物の価値を高める研究拠点となる。漁業者グループなどに施設を開放し、加工品の試作開発をサポートする機能も備えている。首都圏で高い評価を得、高値で取引されている「庄内おばこサワラ」に続く第二、第三の庄内産ブランド魚の誕生へ、この施設が担う役割は大きい。

 全国各地で、地魚のブランド化に向けた取り組みが活発化している。本県では、庄内おばこサワラがその代表格。船上で活(い)け締め・神経抜きを施すことで鮮度が保たれ、傷みが早いとされる魚種でありながら、刺し身にできる期間を3倍以上延ばすことを可能にした。熟成によってうま味も引き出され、市場で高い評価を得て本県のエース魚に育った。

 これに続く魚種として、近年、水揚げが増えている「庄内浜産天然トラフグ」が有望視されている。トラフグは荒天が続き出漁日数が減る冬に旬を迎えるため、市場への安定供給が課題とされている。天候が穏やかな時期に水揚げしたトラフグを、味や鮮度を落とさずに冷凍保存する技術の確立が求められている。

 西日本では、タイなどを対象に「活け越し」という手法が普及している。水揚げの際、魚が暴れてエネルギーを消費することで、アデノシン三リン酸(ATP)という物質が減少する。水揚げ後にいけすに放す「活け越し」をし、ATPの量を回復させることで、魚体の完全硬直を遅らせている。魚体が硬くなる前の状態を好む京都の料亭などの市場ニーズに応え、高い価値を生み出している。

 漁業の範ちゅうは「水揚げするまで」から「水揚げした後」にまで拡大している。漁業関係者は、水揚げした魚に新たな価値を加える高付加価値型漁業に活路を見いだそうとしている。おいしい魚加工支援ラボは、うま味成分のデータ化や魚種に適した鮮度保持技術の開発、急速冷凍技術の活用方法を探るなどし、庄内の地魚のブランド化を科学的視点から促す。

 この施設は2階建て。1階には、魚介類の成分分析などを行う機器をそろえた分析室と、急速冷凍装置や真空包装機、蒸気であらゆる調理ができるスチームコンベクションオーブン、食品乾燥機などを整えた調理試作室を整備した。調理試作室は、地元の漁業者グループなどに開放し、総菜などの加工品開発や試作の場として提供する。2階には研修室を設けた。来年、5代目への更新が計画されている県の漁業試験調査船「最上丸」との連携も想定している。

 県水産試験場は今春、資源利用部を新設する機構改革を行った。水産物の付加価値向上に向けた技術開発を担当する。従来の海洋資源調査部と浅海増殖部と合わせ3部体制となった。一方で職員数は、ラボの管理を担当する再任用者1人を除くと23人と変わらず、兼務によって職員を配置している。高度化する漁業分野の研究開発に対応できる専門知識を持った人材の育成と確保に向け、間断のない努力が求められよう。

(2018/11/13付)
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