社説

公取委「フリーランス」見解 個人事業者の権利守れ

 公正取引委員会の有識者会議は、特定の企業や団体と雇用関係を持たずに働く「フリーランス」について、独占禁止法により保護されるとの見解をまとめた。発注側が著しく安い報酬などの不利な条件を押し付けるのは独禁法違反となり、行政処分や指導の対象となる。

 発注側との力関係で弱い立場にあり、不利益を被りやすい働き手の権利を守ることが見解の狙いだ。今後この見解が独禁法運用の指針となり、個人で働く人の権利を守っていく意義は大きい。フリーランスが存分に能力を発揮できる環境を整え、少子高齢化で深刻化する人手不足の解消に向けた着実な一歩にしたい。

 フリーランスは個人で仕事を請け負う「自由業」の人を指し、職種は専門性を生かしたIT技術者や著述家、デザイナーなど多岐にわたる。一部の医師や美容師、大工のほか芸能人、スポーツ選手も該当し、会社員の副業も含めた広義のフリーランスは1千万人超とされる。近年は自由な働き方を選ぶ人が増えたほか、仕事の受発注を仲介するサイトの拡充も進んでおり、2015~30年に350万人余り増加するとの予測もある。

 技術革新が激しい時代に、企業が生き残りのため専門性の高い外部人材と連携するケースは増え、政府も人手不足への対応策としてフリーランスの活用を促している。だがフリーランスは契約が口約束というケースが目立ち、報酬の支払い遅れや一方的な減額、発注した製品の受け取り拒否といったトラブルが、各方面で後を絶たなかった。

 フリーランスは個人事業者として扱われ、労働法制での位置付けが明確でなく労働基準法などの保護が十分に及んでいない。独禁法は、取引上の強い立場を利用し相手に無理な条件を押し付ける「優越的地位の乱用」を禁じるが、労働に絡む事案は事実上対象としてこなかった。関係省庁にも改善に乗り出す動きはなかったが今回、公取委がフリーランスを独禁法で保護する姿勢を明確にした。

 有識者会議は、複数の発注者が取引相手に払う報酬などの条件や移籍・転職の制限を申し合わせるのは、独禁法上問題になると指摘した。移籍などの制限については「取引先の育成に要した費用を回収する目的との主張があるが、違法性が否定されることはない」としている。さらに発注者が「優越的地位」を乱用し、過度の秘密保持義務を課して他社との取引を抑制するのも問題とした。

 見解を踏まえ、公取委は関係業界に自主的な点検と是正を促すとしている。見解には警告の意味があり、不公正な契約が抑制される契機となることは評価できよう。しかし公取委も認めるように、これは「問題解決の第一ステップ」にすぎない。独禁法だけでは対応できない問題が少なからずあるため、法整備を含めた対策を急ぐ必要がある。

 業界ごとに特有の事情や慣行があり、独自のルール作りに長年努めてきた経緯もある。公取委は業界慣行の背景などにも配慮しつつ、フリーランスの実態をより詳細に把握し保護を強化していく必要がある。その上で、どこまで労働法制で対応できるかを見極めながら、必要な法整備を積極的に進めてもらいたい。

(2018/02/22付)
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