社説

緊張高まるイラン情勢 日本は仲介役粘り強く

 「戦争は望んでいない」と互いに述べながらも、米国とイランの関係が緊張の一途をたどっている。

 米国防総省は17日、イラン沖のホルムズ海峡近くで起きたタンカー攻撃にはイランが関与していると主張し、中東地域に新たに米軍約千人を増派すると発表した。一方イランも同日、低濃縮ウランの貯蔵量が核合意で定められた上限を10日後の27日に超過すると発表した。さらに7月上旬以降、濃縮度を核兵器級のウラン製造が容易になるとされる20%まで高める選択肢もあると警告した。

 イランが含まれるペルシャ湾地域は世界の原油生産の中心地であり、日本が輸入する原油の8割以上がホルムズ海峡を通過する。軍事衝突に発展すれば油価が乱高下し、経済に打撃を与える。困難な状況ではあるが、日本は粘り強く仲介外交を続けるべきだ。

 日本の海運会社が運航するタンカーを含む2隻がホルムズ海峡近くで攻撃されたのは、緊張緩和を目指しイランを訪れた安倍晋三首相が最高指導者ハメネイ師と初会談に臨む直前の13日朝だった。米国とイランの仲介に乗り出した首相のメンツは著しく傷つけられた形だ。

 ただし、米国の言うようなイラン犯行説に安易に同調することは避けるべきだろう。ポンペオ国務長官は、米国の制裁で原油輸出を封じられたイランが原油価格の高騰を狙ってホルムズ海峡近くで攻撃に出たと主張。国防総省は小型船に乗ったイラン革命防衛隊メンバーの写真を公表し、タンカー攻撃への関与の証拠を隠滅するため不発弾の回収作業に当たったとしたが、米メディアは革命防衛隊が爆弾を船体に取り付けた決定的な証拠とはいえないと指摘している。

 米国に距離を置く姿勢は欧州にも見られる。欧州連合(EU)の外相理事会に出席したルクセンブルクのアッセルボルン外相は、米政権がイラン犯行説を主張する状況が、誤った情報を基に侵攻したイラク戦争の前に「似ているかもしれない」、ドイツのマース外相も実行者特定は「とても慎重にならなければならない」と述べた。

 核合意で定めた低濃縮ウラン貯蔵量の上限の超過など、核開発推進をちらつかせるイランの「瀬戸際戦術」にも賛成はできない。ただし、米国による原油の全面禁輸や金融取引への制裁によって、イラン経済が疲弊しているのは事実だ。今回の危機はイランが順守する核合意から米国が一方的に離脱し制裁を科したことで始まったのだから、まずは米国が姿勢を変化させるのが本来の筋だろう。

 もちろん、イランも中東の民兵組織への支援や弾道ミサイル開発など問題は多い。核合意も短期的な核開発の制限を定めるだけで、長期的な課題は手つかずだ。これらはイランが譲歩すべきだ。

 シリアの混乱、イエメン内戦など中東の紛争に共通するのはイランの存在だ。これらの問題を少しでも解決するには米国とイランが対話を始める必要がある。

 28、29日には大阪で20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれ、米国、欧州などから関係諸国が集う。緊張緩和のためどのような仲介ができるか。議長を務める安倍首相の手腕が問われる。

(2019/06/19付)
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