社説

「遊佐の小正月行事」の遺産登録 次世代へ継承する力に

 アマハゲを含む「遊佐の小正月行事」が、「男鹿のナマハゲ」(秋田県)などとともに8県10件の「来訪神 仮面・仮装の神々」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。遊佐町の海辺の3集落で受け継がれてきた民俗行事が、世界的な評価を受けた。次世代へ伝える弾みにしたい。

 アマハゲは、秋田県境に近い同町の日本海沿いに位置する女鹿、滝ノ浦、鳥崎の各集落に伝わる。面をかぶり、わらで編んだみのを何重にも重ねた「ケンダン」を身にまとった異装の訪問者アマハゲが年の初めに各戸を回る。

 家に入ると、家主と新年の祝いを交わした後、声を出したり身を揺すったりしながら子どもなどを威嚇する。いろりにあたってばかりいると手足にできる火だこを方言で「アマミ」ということから、アマハゲは「火だこを剥ぐ」が語源という説があり、怠け心を戒めるとともに災厄を払う行事になったとされる。

 女鹿は1月3日、滝ノ浦は同1日、鳥崎は同6日に行う。3集落で共通点は多いものの使う面はそれぞれ違い、動きや進め方にも異なる点がみられる。鳥崎では子どもらが練り歩く「鳥追い」、門松などを焼く「ホンデ焼き」も伝承され、これら正月に行う一連の行事を「遊佐の小正月行事」としている。

 ほかに登録されたのは「吉浜のスネカ」(岩手県)「米川の水かぶり」(宮城県)「能登のアマメハギ」(石川県)「甑島(こしきじま)のトシドン」(鹿児島県)など。

 このうち甑島のトシドンは2009年に単独で遺産登録されている。政府は男鹿のナマハゲの追加登録を目指したが、「トシドンと類似している」との理由で見送られた。そこで複数の行事をまとめて一つの遺産とみなす手法に切り替え、昨年3月に「来訪神」として申請した。申請対象となったのは国指定の重要無形民俗文化財10件で、1999年に指定された遊佐の小正月行事も組み込まれた。

 これら10件は、過疎化や少子高齢化による担い手不足が共通の課題になっており、4年前には来訪神行事保存・振興全国協議会が結成された。知名度の高い男鹿のナマハゲも途絶える集落が増えていたが、無形文化遺産の申請などを追い風に復活させる動きが出てきたという。各地と情報を共有し継承に役立てたい。

 遊佐の小正月行事も各集落の若手が減り、受け継ぐ環境は厳しい。「遊佐のアマハゲ保存会」は6月に時田博機町長が会長に就き、町を挙げて組織強化に乗り出した。遺産登録は保存への意識を高める一方、集落外からの担い手の受け入れといった課題を含めて行事の在り方を見つめ直す契機になりそうだ。

 遊佐町民俗芸能公演会は60回の節目を迎える来年度、アマハゲのほか今回登録された県外の来訪神行事の出演も想定している。町はアマハゲを観光に活用することには慎重だが、こうした機会をとらえ県内外に発信していくという。

 アマハゲなど来訪神行事は、地域の絆や世代を超えた交流に重要な役割を果たしてきた。遺産登録が保護へのエネルギーとなり若者の定着につながれば大きな前進だ。伝統行事の世界的な価値に誇りを持ち、地域の良さを見直したい。

(2018/12/11付)
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