ちょっとそこまで

大頭森山麓・シカを追う~大江

(2011/04/19掲載)

身も心も浄化されたい

 2月5日の本紙朝刊に載ったニホンジカ発見の記事。大江町柳川の大頭森(だいずもり)山麓でシカを目撃し、撮影に成功した町民2人のうちの1人が、寒河江支社勤務時に知り合った僧侶沖津雅秀さん(45)=同町左沢=だった。「ことしは数え年で42歳の厄年。シカを捜しながら雪山を歩いて、身も心も浄化されたいんです」との記者の身勝手な要望に対し、沖津さんは「分かりました。『六根清浄(ろっこんしょうじょう)スノートレッキング』といきますか」。シカとの出合いを期待し、3月初旬の大頭森山麓を歩いた。

雪が降りしきる中でのトレッキング。道路標識も大部分が雪に埋もれていた=大江町柳川
雪が降りしきる中でのトレッキング。道路標識も大部分が雪に埋もれていた=大江町柳川
 沖津さんのほか、同行してくれたのは、沖津さんとシカを見つけてカメラに収めた同町職員庄司光幸さん(32)=同町黒森=と、大江山岳会副会長の阿部吉太郎さん(61)=同町本郷。冬季は雪のために閉鎖されている県道大江西川線を歩くこととし、通行止めが始まる同町柳川の矢引沢集落西側に車を止めてスノーシュー(西洋かんじき)を履き、午前9時ごろ出発した。

 県道の路面は、深さ2メートル以上の雪の下。出発から1時間半ほどかけ、庄司さんがシカを撮影した現場に到着した。清らかな水が流れる沢沿いで、「撮影した当時と比べ、雪の量がだいぶ多い」と庄司さん。周囲を観察したが、シカの姿も足跡も確認できず、さらに山中に足を進めた。しかし、傾斜がきつくなり、雪も次第に軟らかくなったため、一歩進むごとに体力を消耗。午後0時半ごろに大頭森山の下を貫く大井沢トンネルに到着した際には、疲労困憊(こんぱい)の状態だった。

 出発地点から歩いた距離は約2・5キロ。寒風が吹くトンネル内で携帯ガスこんろを使って湯を沸かし、カップ麺を食べてようやく人心地がついた。コースを引き返し、再びシカの撮影現場近くに差しかかった時のことだった。「ボエー」。低く、間の抜けた声が斜面の上から聞こえてきた。声の主を捜すと、1頭のカモシカが遠くの木々の間からじっと見ていた。シカと出合えなかった記者を哀れみ、見送ってくれたのか。車を止めた場所まで戻って帰途に就き、柳川地区内の奥おおえ柳川温泉の湯で疲れを癒やしながら、そんなことを思った。

動物のたくましさ実感

遠くの木々の間から顔をのぞかせたカモシカ(中央)。じっと動かずにこちらを見ていた
遠くの木々の間から顔をのぞかせたカモシカ(中央)。じっと動かずにこちらを見ていた
 それから約1カ月。東日本大震災の発生、編集局報道部から東根支社への転勤を経て、トレッキングのスタート地点付近を今度は1人で歩いた。周囲の斜面の所々に土が見えるが、足元の積雪量はまだ2メートル近い。キノコ栽培用のほだ木を用意するため、大井沢トンネル近くまで登った帰りという大江町沢口、会社員大場光男さん(62)と会い、シカを見掛けなかったか聞いた。「見ていない。カモシカの足跡はあったけどね」。

 震災によって社会は激変し、疲れを癒やしてくれた柳川温泉も震災後の湯量の減少で日帰り入浴の営業を停止したが、動物たちの生活は変わらず続いているのだろう。そのたくましさを、少しでも人間に分けてもらいたい気がした。

(東根支社・三沢秀樹)

【メモ】ニホンジカ シカ科。かつては全国各地に生息していたが、本県など北日本の日本海側では雪の深さや、狩猟の対象になったことなどから、大正中期に絶滅したとされる。近年、ニホンジカが苦手とする雪が少なくなっていることなどから生息域が拡大しているとみられ、本県でも今年に入って大江町柳川、朝日町白倉で雄の成獣が相次いで目撃、撮影されている。ちなみにカモシカはウシ科で、シカとは属種が異なる。
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