ちょっとそこまで

星空眺め、写真撮影~南陽

(2011/10/26掲載)

深夜、高ツムジ山(標高690メートル)へ

 10月上旬、南陽市の赤湯温泉街に人通りが少なくなった午前0時、車で国道13号を少しだけ北に進み、置賜盆地を望む山に登った。山頂から美しい星空を眺め、それを写真に撮るためだ。

体が冷えてくると車内で休憩。壮大な宇宙の話をたくさん聞かせてもらった
体が冷えてくると車内で休憩。壮大な宇宙の話をたくさん聞かせてもらった
 天文学の専門知識はないが、星が好きだという先輩記者に「たまに夜空を眺めるのも楽しいよ」と言われ、勇気を出して星に親しんでみることにした。本来、仕事以外はあまり冒険せず家でゆっくりしていたい保守的な性格なのだが、そんな自分をどこかで変えたかったのかもしれない。

 空に関して素人の記者を指南してくださるのは、小さな天文学者の会の井上晃一さん(51)=川西町上小松、会社員=と、いいで天文台の会の松山秀樹さん(41)=飯豊町萩生、会社員。週1回趣味で星空観察と写真撮影を行う専門家だ。一緒にコンビニエンスストアで温かい飲み物を買い、真冬のダウンを着込んで標高690メートルの高ツムジ山の頂上に着いた。

 「けっこう明るいですね!」と思わず驚嘆した。月が思ったより強い光で私たちを照らしている。赤湯の街はネオンや街灯でキラキラと輝き、住む人の息遣いを感じさせた。井上さんたちが「夜って月や街の明かりで割と明るいんです。星を撮影するには、月が沈むのを待たないと光がかすんでしまうんですよ」と教えてくれた。

 空に向かいカメラを構え、2人にアドバイスを受けながら天空写真を撮影して月が沈むのを待った。井上さんが自分の車から口径30センチの大きな天体望遠鏡を取り出し、月を見せてくれる。月は手が届きそうなほど近く、ざらざらしたクレーターやウサギの模様がくっきり見え、触ることができそうなほどだ。

静寂の中、遠のく日常

井上さんの天体望遠鏡に、記者の携帯電話のカメラレンズを近づけて撮影した月。クレーターやウサギの模様がはっきり見える
井上さんの天体望遠鏡に、記者の携帯電話のカメラレンズを近づけて撮影した月。クレーターやウサギの模様がはっきり見える
 時々虫の声や国道を通るトラックの音が聞こえる以外は本当に静かだ。今ここに存在しているのは空と私たちだけ-。そう考えると“下界”での日常がだんだん遠い出来事になっていくのを感じた。今までゆったり過ごせる夜はひたすら深夜番組ばかり見ていたが、「野外にこんなにすてきな景色があるのに、あんな小さな部屋にこもっていたのか…」と自分の世界の狭さを少し恥じた。

 午前2時ごろ月が山陰に沈むと、辺りはぐっと暗くなり、空のスクリーンの主役は星たちに変わる。降り注ぐような無数の星くずの中からオリオン座やおおいぬ座、冬の大三角形などが次々に姿を現し「私を撮って!」と言わんばかりに瞬く。感動した記者が「天然のプラネタリウムですね…」ととんちんかんな感想を言うと、2人は「まさにそうですね」と笑った。

 太陽が昇り始める午前5時まで“観察&撮影会”は続いた。後半は少し眠かったが、ぜいたくな夜を過ごした後、朝の澄んだ空気の中を下山するのはとてもすがすがしかった。「もっと軽い気持ちで出掛ければ、すてきな出来事に出会えるよ」。そう星空が教えてくれた気がした。

(南陽支社・佐藤友理)

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