ちょっとそこまで

大震災 難逃れた船、避難夫婦を訪ねて~酒田、遊佐

(2012/03/07掲載)

不思議な力、運命を実感

柔らかい春の日差しを受ける5代目鳥海丸
柔らかい春の日差しを受ける5代目鳥海丸
 あの日がやってくる。東日本大震災の「3・11」。あの揺れ、あの津波は多くの人たちの生活を翻弄(ほんろう)した。県内で新たな一歩を踏み出した避難者がいる。奇跡的に難を逃れた船もある。発生からまもなく1年。近況が気になり庄内に向かった。

 加茂水産高の実習船「鳥海丸」が、酒田港で春めく日差しを浴びてたたずむ。新学期を前に海洋資源調査に出るところだという。15人の教員や職員が準備に追われていた。

 住宅地に打ち上げられた無残な姿が忘れられない。被災直後の東松島市に入り、4代目鳥海丸を取材した。実習船を引退し、湾内で修繕中だった。5代目は建造を終え酒田港に。震災3日前のことだ。

 「しけてたら翌週運ぶ可能性もあった」。津軽海峡回りで初航行した船長の本間正利さん(50)は振り返り、5代目に不思議な力を感じている。教諭の板垣寿勇さん(48)も「(被災していたら)他県の水産高校に協力を頼むにしても、どうなったか…」と今更ながら胸をなで下ろす。

生徒の夢乗せ大海原へ

海洋資源調査の出発を前に乗組員たちが手を振ってくれた
海洋資源調査の出発を前に乗組員たちが手を振ってくれた
 陽気に誘われデッキであおむけになってみると、乗組員がアンカーを操作するレバーの調整を行っていた。5月から、庄内浜の伝統漁法を学んだり、魚を生きたまま水族館に移送する実習がスタート。生徒たちの夢を乗せたマザーシップと呼ぶにふさわしい。3・11は復旧した石巻港で定期点検を受けている予定だ。

 本紙企画「春待つ避難者」でひときわ輝きを放っていた西山宣暢さん(74)秀子さん(67)夫婦。石巻で自宅を流されながら、偶然立ち寄った遊佐町の道の駅で「メロンが取れるなんてすてき」と感激し、古民家への永住を即決したしなやかさに胸を打たれた。

 例年にない豪雪、庄内特有の暴風に面食らっているかと思いきや「かつて住んでいた古川(現・宮城県大崎市)と変わんないよ」と宣暢さん。被災者の影が全くない。訪問するなり、脚立で屋根裏に案内され「この穴は隕石(いんせき)のせいじゃないか」。800坪の広大な庭を指して「来たときはジャングル。まさに開墾だ」。「髪も黒々と若々しくなったわね」という秀子さんとの掛け合いがたまらない。

 景色が開けた縁側には鳥海山が迫る。庭に池を作り「逆さ鳥海」をめでるのが今一番の楽しみだ。「わが人生の有終を飾るのにふさわしい。ここに来たのは運命なんだよ」と宣暢さん。手作りの車庫にはトラクターが雪解けを待ち、秀子さんは遊佐刺し子を習い始める。「支えてもらうだけじゃだめ。体力付けて自立して、土地になじむ」。「自立と連帯」という人生のキーワードをもらった。

(報道部・阿部研一)

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