ちょっとそこまで

スノーシュー履き月山を歩く~西川

(2012/03/14掲載)

 とにかく今年の雪はすごい。弥生3月を迎えて、こんなに春を実感できない年はないんじゃないだろうか。こんな時、万年雪を頂く月山はどんな状態なんだろう。スノーシューを履いて山に入った。

つわものの後輩、案内役に

 共に東京の寮で学生時代を過ごした後輩Tに案内役を頼み、西川町志津から月山へ。彼は2005年に単身米国に渡り、全長3500キロに及ぶ山脈を徒歩で踏破するアパラチアントレイルを歩き切ったつわもので、月山にも詳しい。

道路案内の標識がこの高さ。電線も目線。この下にそれだけ積雪があるということだ=西川町
道路案内の標識がこの高さ。電線も目線。この下にそれだけ積雪があるということだ=西川町
 車で月山志津温泉を抜け、しばらくしたところで道路の除雪がストップ。ここから山中へ。硬い雪の上に前日降ったばかりと思われる新雪が積もっている。新雪は軟らかく、スノーシューを履いても、時に膝の辺りまで脚が雪に沈んでしまう。雪の中の歩行がこんなに困難とは思わなかった。沈み込むたび、態勢を立て直すため脚を持ち上げなくてはならず、すぐに大殿筋が悲鳴を上げ始めた。わずか10分ほど歩いただけで、寒さはまったく感じなくなっていた。

目の高さに標識や電線

 しばらくすると、視界に違和感があった。何かが本来あるべき場所に収まっていないような。「!」。電線だ。本来見上げるはずの電線が目線にあるのだ。恐るべし。ややすると、今度は道路標識が目線に。直下が道路で、普通に考えれば、積雪は3~4メートルにも及ぶということだ!

 1時間ほど歩いて、目的地の県立自然博物園に。屋根には、ものすごい量の積雪。1階部分は、すっかり雪に埋もれてしまっている。よくこれでつぶれないものだ。

 ここでTがザックから水とバーナーを取り出し、インスタントラーメンを調理する。根っからのアウトドア派のTは「山に来たらインスタントラーメン。絶対に普通に食べるのとは味が違う」。ごみを増やしたくないので、カップ麺ではなく、袋入りというこだわりもあるという。

目的地である県立自然博物園に到着。驚くことに見えているのは2階部分。1階は雪に埋まっている
目的地である県立自然博物園に到着。驚くことに見えているのは2階部分。1階は雪に埋まっている
 続いてコーヒーを飲みながら辺りを見渡してみると、あちこちで落葉して裸になった木々の枝に丸くゴチャゴチャしたものが絡み付いている。「カラスか何かの巣?」かと思ったら、ヤドリギという寄生植物の一種なのだそうだ。

 山中は風もなく、聞こえる音はほとんどない。「静かですね」とT。モノトーンの風景と静寂。時間まで下界とは違う流れ方をしているみたいだ。

 木々は春への準備を着々と進めているはずだが、やすやすと侵入者にその気配を見せようとはしない。驚くべき量の雪が日々少しずつ少しずつ、そのかさを減らすのに合わせ、周到に計算高く芽吹きの時期を探っているのだ。平地も厳寒、豪雪に見舞われたこの冬。月山に生命の躍動感があふれる春がやって来るまでには、まだ時間がかかりそうだ。

(報道部・伊藤英俊)

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