ちょっとそこまで
雪深いキノコ王国を訪ねて~鮭川
(2012/03/28掲載)
地域づくり、伝わる情熱![]() 7年ほど前からシイタケ栽培に取り組む川田幸一さん 3月中旬。田んぼは分厚い雪に覆われ、春はまだ遠い。村役場を訪ね、キノコの魅力を味わうフルコースを同村産業振興課の山科裕一さん(28)に案内してもらった。 まずは栽培現場へ。農業生産法人「あぐり大地」の川田幸一社長(53)は、建設会社経営の傍ら7年ほど前からシイタケ栽培を始めた。きっかけは「事業の発注が減り、収入の安定を見込んでこの世界に飛び込んだ」。建設技術を生かしたビニールハウスでは、ナラ材を砕いて作った菌床にシイタケの芽がちらほら。ハウス内の温度は約15度で、水を噴霧しながら愛情をかけていた。毎日、朝と夕に収穫し「すぐに大きくなるから、こまめに足を運ばないと」と川田さん。すくすく育つ“わが子”に目を細めていた。 ヤマブシタケは見た目がワタのようにフワフワで、食べるとシコシコ。「中国では高級食材」と「最上まいたけ」の荒木正人社長(61)。物珍しさが注目を集めている。
![]() 羽根沢温泉にある旅館3施設が共通メニューで提供しているキノコ前菜「九珍」 地元のお母さんたちも販路拡大へ一役買う。保育所だった施設を利活用し、農家の主婦6人が昨秋、農産加工グループ「工房七つの里」を立ち上げた。活動の原点は規格外野菜の有効利用、キノコのまちのPR。活動を通じて生産意欲も高まり、交流の場にもなっているという。炊き込みご飯の具材などを作り、地元の「産直さけまるくん」などで販売中だ。
栽培現場を見学“火付け役”に会うそもそも鮭川のキノコのルーツとは。“火付け役”の荒木栄輔さん(71)=中渡=を訪ねた。昭和40年代前半、出稼ぎ先の塩釜で、テレビで偶然目に留まったキノコの冷蔵栽培。「これなら雪国でもできる」とヒントを得た。仲間と試行錯誤を繰り返してエノキ、マイタケなどの通年栽培に着手し、自ら売りに出掛けたといい、それが徐々に軌道に乗って、村の基幹産業へと成長した。荒木さんは「鮭川でキノコがこんなに有名になると思わなかった。われながら大したもんだな」と照れ笑いを浮かべた。キノコの収穫体験や産直レストランの開設、海外での市場デビューなど村の夢は尽きない。地元の商工会、行政などでつくる鮭川地域資源戦略会議の山科伸也本部長(56)は「高齢化が進み危機感はあるが、地域全体で取り組める振興策を見つけていきたい」と話す。キノコ一つにこだわる思いの強さ。その奥深さを垣間見つつ、地元住民のパワーをお裾分けしてもらい幸福感に浸った。
(報道部・佐藤裕樹)
【メモ】
鮭川村のキノコ 村役場によると生産量は年間約6000トン、市町村単位では東北一。村では70近い団体・個人が栽培に取り組む。主にナメコ、ブナシメジ、シイタケ、エノキ、マイタケ、エリンギ、ヤマブシタケの7種類。最近は埼玉県内のホテルなどでも食材として広く使われ、販路が拡大している。
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